動画が撮れるインスタントカメラ、1秒程度の映像をその場で印刷 米MITが開発:Innovative Tech
米MIT(Massachusetts Institute of Technology)の研究チームは、動画が撮れるインスタントカメラを開発した。撮影した動画(数枚のフレームが写った1枚の画像)をその場で印刷し、縞模様のシートを重ねて移動させる方法で記録した1秒程度の動きを生成する。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
米MIT(Massachusetts Institute of Technology)の研究チームが開発した「KineCAM: An Instant Camera for Animated Photographs」は、動画が撮れるインスタントカメラだ。撮影した動画(数枚のフレームが写った1枚の画像)をその場で印刷し、縞模様のシートを重ねて移動させる方法で記録した1秒程度の動きを生成する。
ポラロイドに代表されるインスタントカメラには、懐かしさを感じる魅力がある。静止画像を記録する写真としての活用が一般的だが、今回研究チームはインスタントカメラで動画が撮りたいと考えた。
このアイデアを実現するために、1800年代後半、アニメーション映画が登場する直前に発明された「キネグラム」という手法に着目した。スキャニメーションとも呼ばれ、一定の間隔に描かれた画像上に縞模様が描かれた透明シートを重ねて横や縦に動かすと画像が動いて見える、パラパラ漫画のような目の錯覚を利用した遊びだ。
「KineCAM」と呼ぶ、このカメラのワークフローは、キャプチャーとプロセッシング、ファブリケーションの3層構造で構成する。撮影者がシャッターボタンを押すと、インジケーターLEDが1秒間点灯し、KineCAMが動画を撮影していることを示し、撮影が終わると消灯する。
動画からフレームを抽出し、キネグラムに加工した後、Raspberry Piがサーマルプリンタに出力する。縞模様のオーバーレイは、通常のインクジェットプリンタで透明フィルムに別途プリントする。
動画に見える具体的な仕組みは次のようなものだ。同じ物体をさまざまなポーズで撮影した画像(フレーム)を3枚用意する(ここでは蝶)。そして、それぞれの画像を横方向に一定の幅で10本程度に切り分ける。次に、この3つの画像を1ページにまとめて、合計30本の水平ストリップからなる1枚の「インターレース画像」(縞模様のように一定の間隔に記録した画像)を作成する。
次に、「ストライプ・オーバーレイ」と呼ばれる、インターレース画像のストリップと同じ幅の透明なストリップ(これも全部で10本)を持つ別のシートを用意する。この透明な帯の間に、透明な帯の2倍の幅の不透明な帯を10本挟みこむ。インターレース画像の上にストライプ・オーバーレイを置き、オーバーレイを下に動かすと、蝶がさまざまなポーズをとって動く様子が見ることができる。
このように数フレームの画像を取り込み、画像をスライスし、スライスしたものをプリンタに送り印刷する。印刷物に縞模様のシートを重ねて移動させることでアニメーションを知覚させる。撮影から印刷まで約16秒で完了するという。
プロトタイプは容易に手に入る市販品で構築できるようにしている。電池を除く全ての部品は、3.5(高さ)×5.6(幅)×1.7(奥行き)インチの箱に収まり、Raspberry Pi、スマートフォンに搭載されているようなカメラ、レシート印刷に使われるようなサーマルプリンタ、カメラのシャッターボタン、LED表示ランプなど、主要な部品全て含めても100米ドル以下で購入できる。
デモでは「手を挙げる」「ビンタする」「お姫様抱っこをする」など1秒程度のさまざまな動きを記録し印刷した。画質が悪く見えるが、被写体やその動きを確認でき白黒映像の1コマのように表現される。下記の補足動画ではどのようなアニメーションで知覚できるかを確認できる。
Source and Image Credits: Ticha Sethapakdi, Mackenzie Leake, Catalina Monsalve Rodriguez, Miranda J. Cai, Stefanie Mueller.“KineCAM: An Instant Camera for Animated Photographs”
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