「ファスト映画を見て衝撃を受けた」 著作権を知らず“映画愛”の表現を間違えた元投稿者(2/3 ページ)
元ファスト映画投稿者の男性が、記者に動画投稿の経緯と思いを語った。男性は映画好きではあったが著作権意識が薄く、初めて見たファスト映画に魅せられ、投稿者になってしまった。
「自分でも作れないかな」 著作権知識はほぼ0
そして「動画を見ていて楽しかった。自分でも作れないかな」と思った。
Aさんは著作権についてほとんど知らなかった。YouTubeがアラートを発すれば「著作権がある」、アラートがなければ「フリー素材なんだ」という認識だったという。
YouTubeに投稿された映像を使い、自宅にあったゲーム用のデスクトップPCとソフトで編集。起承転結をまとめた上で、自分の解説も追加した。もともと加入していたAmazonプライムビデオの映像を使うこともあったという。制作費はせいぜい電気代程度だ。
YouTubeに投稿したところ再生数は100万を超えた。Aさんは、あくまで動画編集が楽しかったのであって、再生数にはあまり興味がなく、動画に付いたコメントも全く見ていなかったという。より多くの人に見られる編集を心掛けたわけでもなく、最初に見たファスト映画の真似を続けていた。
動画の収益化にも少し興味があったが、YouTubeの申請が通らなかったため収益化はしなかった。
「『通らないんだー』くらいに思っていました」(Aさん)
Aさんはその後も自分が好きな邦画を10本程度ファスト映画化した。再生数は数千回から数十万回ほどだった。自分がやっていることが悪いことだとは思っていなかった。
「過去動画が著作権を侵害しています」 弁護士事務所から連絡
Aさんは21年6月、釣りに出ていた。魚が食いつくのを待つ間、スマートフォンでネットサーフィンをしていると「ファスト映画投稿者が初の逮捕」というニュースが目に入った。
<関連記事:「ファスト映画」投稿者が初の逮捕、著作権法違反の疑いで>
「ニュースを見て(自分がやっていることは)いけないことなんだと気づいて、焦って動画を消しました」(Aさん)
それからしばらくたった22年5月、母親のもとに弁護士事務所から書類が届いた。
「過去に上げていたYouTubeチャンネルと動画が著作権を侵害しています」
中にはAさんが投稿したファスト映画による損害額などが記されていた。ネット文化に明るくない母はAさんにどういうことなのか尋ねた。
「母に書類について聞かれて、自分では心当たりがあったので『やばいな』という感情になりました」(Aさん)
Aさんはこれまでの状況を説明した。母からは「人に迷惑をかけたんなら誠心誠意対応するように」と言われたという。
結果的に、Aさんの事案は刑事事件にならなかった。Aさんがすぐに謝罪したことや、投稿本数などを鑑みての判断となった。
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