NTT持ち株、緊急通報ローミングに前向き 「できることから速やかに」
NTT(持ち株)の島田明社長は8日の決算発表会の場で緊急時のキャリア間ローミングに前向きな姿勢を示した。
NTT(持ち株)の島田明社長は8日に開催した決算発表会の場で、7月上旬に発生したKDDIの大規模通信障害を機に総務省などが議論を始めた緊急時のキャリア間ローミング(通信網の相互乗り入れ)について言及し、「できることから速やかにやっていきたい」と前向きな姿勢を示した。
キャリア間ローミングの実現には技術的、法制上の課題が多い。例えば障害が起きた事業者から他の事業者へ一気にトラフィックが流れ、輻輳(ふくそう)を起こして“共倒れ”する可能性も指摘されている。NTTでは「輻輳の波及を避けることは大前提」とし、まずは緊急通報についての議論を進める考えだ。
スマートフォンはSIMなし(電話番号なし)でも緊急通報だけは行える機能を備えているが日本では使用できず、電話番号がないと消防署などからのコールバック(折り返し)を受けられない問題もある。しかし島田社長は時間やコストがかかる議論は後回しにして「できること」から早期実現を目指すという。まず緊急通報を可能にして、次のステップでコールバックやSMSの利用などを検討すればいいという考えを示した。
コスト負担についてはキャリア負担が大前提と話したが、この点についてNTT広報は「コールバックなしの場合でもシステムの改修は必要。(島田社長は)大前提としてキャリアが負担すべきコストという見方を示したが、一方でどこまでやるかでコストは大きく変わる。今後の議論の行方を見定める考え」と補足している。
キャリア間ローミングを巡っては総務省が9月にも検討会を立ち上げる方針を示した。ソフトバンクに続きNTTも前向きな考えを示したことで議論が加速するとみられる。
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