「ブルーレイに補償金」の筋が悪い理由 “中の人”が解説(3/3 ページ)
文化庁は、録画補償金の対象として、ブルーレイレコーダーを追加指定するパブリックコメントを開始した。筆者は、録画録音補償金制度の在り方を議論する、文化庁文化審議会著作権分科会で専門委員を務めたことがある。今回の改正案は「中の人」から見ると相当に筋が悪いものに見える。その理由を解説したい。
これを許すとどうなるか
話をまとめると、今回のブルーレイ政令指定は、文化審議会で合意も得られておらず、省庁間での合意もなく、文化庁単独の判断で政令指定する、という格好になっている。仮にこれが通るならば、今後も補償金対象機器は文化庁だけの単独で決められるという前例を作る事になる。
これまで審議会で検討してきた内容を振り返ると、次のターゲットはスマートフォンとクラウドサービスという事になるだろう。現在フランスでは、クラウドへの補償金適用へ向けて司法判断を積み重ねており、これが通ればクラウドにも補償金、という流れができることになる。
ヨーロッパの消費者団体が補償金に対して積極的なのは、補償金の支払者が消費者ではないからである。ヨーロッパの補償金制度では、補償金の支払者はメーカーやサービス事業者に設定されている。すなわちレコーダーなどのハードウェアでは日本、韓国、中国から金を取り、クラウドではGAFAから金を取ってばらまく、という話なのである。
一方日本では、補償金の支払者は消費者に設定されている。今からブルーレイレコーダーは買わないからいいや、と思われるかもしれないが、対象の指定に関係各所の合意形成は不要ということになれば、今後どう拡大されるか分からない。「実はハンドルもブレーキもいらなかったです」という話だからである。
この問題にはまだ言及すべきポイントがいくつか残っているが、ひとまずこれぐらい知っておけば、パブリックコメントは書けるのではないかと思う。今回のパブコメは特にフォームなどは設定されておらず、郵送・FAX・メールで受け付けている。1意見1通という事なので、複数意見がある場合は何通でも出せる。意見の提出方法は以下のリンクにある。
おそらくこの件はSNSで大きな騒ぎとなるだろうが、そこで騒いでも政策には反映されない。行政はSNSの意見を配慮する必要などないからである。どんな意見であっても、重複していても構わないので、全てパブリックコメントへぶつけて欲しい。
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