FTC、中絶特定を可能にする可能性があるとして広告技術のKochavaを提訴
米連邦取引委員会(FTC)は、広告トラッキングツールを提供するKochavaを提訴した。同社が提供するツールで、中絶しようとしている人などの個人の特定が可能になり、個人を危険にさらしていると主張する。
米連邦取引委員会(FTC)は8月29日(現地時間)、広告トラッキングツールを提供する米Kochavaを提訴したと発表した。「数億台のスマートフォンの位置情報データを販売することで、機密性の高い個人の行動の特定を可能にし、個人を危険にさらしている」と主張する。Kochavaに対し、位置情報データの販売の停止と、位置情報データの削除を要求した。
Kochavaは2011年創業のアイダホ州に拠点を置く広告支援企業。数億台のスマートフォンから取得した位置情報をスマートフォンの識別番号と照合し、クライアントによる適切な広告表示や分析に役立てている。
FTCは、Kochavaが提供するデータにより、第三者はスマートフォンのユーザーを特定・追跡できるとしている。これにより、ユーザーは差別、身体的暴力、いやがらせなどの危害にさらされる可能性があると主張する。
特に、データはリプロダクティブヘルス(性と生殖に関する健康とその権利)関連のクリックを訪れた人を特定するために使われる可能性があるとしている。
米国では6月、最高裁が妊娠中絶は女性の権利だとした1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆す判断を示したことから、中絶が非合法とする州が増加した。
FTCのリナ・カーン委員長は「この提訴は、8月初旬に発表した、違法な商業的監視行為を取り締まるための規則の検討に連なるものだ。FTCの任務は、米国人のプライバシーを保護するためにあらゆる手段を使うことだ」とツイートした。
Kochavaは米Reutersなどに対し、「FTCはKochavaのビジネスについて根本的に誤解している。われわれはすべての規則と法律を順守している」という声明文を送った。
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