揺れ動く「オフィスで働く意味」 ハイブリッドワーク時代の最適解は 試行錯誤を重ねるコクヨの考え(2/2 ページ)
在宅勤務の普及で揺らぐオフィスの在り方。ハイブリッドワークを採用する企業も増える中で、オフィスに見いだすべき価値とは。働き方に関する実験施設を開設するなど、試行錯誤を重ねるコクヨに考えを聞く。
社員の可処分時間と成長実感 コクヨが抱えたジレンマ
働き方を巡ってさまざまな取り組みを進めているコクヨ。一見、それぞれ独立した施策にも見える。しかし、実はそれぞれの取り組みは地続きで、どれもあるジレンマを意識しているという。コクヨが抱えるジレンマ、それは在宅勤務で生まれる社員の可処分時間と、オフィスワークで生まれる成長実感の対立だ。
THE CAMPUSでは、実験だけでなく働き方に関する社員へのアンケートも実施している。そこで明らかになったのが、若い社員が抱く在宅勤務への不安だ。同社によれば、20〜30代の若い社員については、出社率と成長実感が相関することが分かったという。
定性的な意見として、若い社員からは「在宅勤務が続く状態で、社会人として軌道に乗れるのか」といった不安の声も出ていた。一方で、オフィスワークから在宅勤務への移行を経験した社員からは、可処分時間が増えることを評価する声もあった。
「ある程度務めた人は在宅勤務でもこれまで通り、もしくはオフィスに行くより生産性が高い仕事ができるかもしれない。ただ、そこに突き進むことで失うものの大きさもある。若手メンバーからは『このままで自分の強みを見つけられるのか』といったコメントもあった」(江崎さん)
このジレンマを解決するために採用したのが、コクヨ式ハイブリッドワークにおける選択制や、サテライトオフィスを業務時間外にも私的利用できる仕組みという。
つまり、ただハイブリッドな働き方ができるだけでなく、さまざまな働き方を柔軟に切り替えられるようにし、可処分時間の暮らし方と成長実感のバランスを社員自身が組み立てられるようにしたわけだ。コクヨでは、この考え方を「ライフベースドワーキング」と呼び、一連の施策における基本的な方針にしているという。
「可処分時間をどう自分の今後に活用するか、というのはこれからすごく大事になっていく。ウェルビーイング(誰もが健康的に楽しく働ける労働環境を目指す考え方)でも、学び直しできる時間を作ることを目指している。ということは、可処分時間を確保することも重要と考え、コクヨでもこの方向を目指している」(江崎さん)
若い社員の理解度高まらず コクヨが直面する課題
一方で、一連の施策には課題もあるという。それは肝心の若手社員に、取り組みの意図が伝わっていないことだ。
22年4月に取ったアンケートによれば、一連の取り組みに対し、30代、40代、50代の社員はいずれも過半数がポジティブな印象を持っており、「よく分からない」という回答は3割前後だった。一方、20代社員のうち、ポジティブな反応を返したのは全体の半数弱。残りは4割強が「よく分からない」、2割弱がネガティブな反応だった。
コクヨはこの結果を受け、施策への理解が進んでいないと判断。ただし原因については「事務局のメンバーが30代後半以上の社員で構成されていることもあり、まだ把握できていない」(江崎さん)という。現在は社内副業制度を活用し、20代の社員をメンバーに加えることで、改善に向けた取り組んでいるという。
「自分と同世代の人がどう考えているか、どうしたら共感してもらえるか、同じ年齢の視点で一緒に考えている。ライフベースドワーキングに加え、当社がビジョンとして掲げる、自立と協働が可能な社会に向かっていきたい」(江崎さん)
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