テレワークに“黄信号” 世界8カ国の働き手90%が「燃え尽き症候群」? 日本の課題はコミュニケーション
テレワークが浸透し、働き手のワークライフバランスは改善されたように見えるが、世界8カ国の働き手の90%が“燃え尽き症候群”の兆しを感じているという。調査をしたHubSpot Japanは「仕事とプライベートの切り替えが困難になっていることが原因にある」と指摘する。
コロナ禍から約2年、テレワークという働き方は大きく広まった。出社とテレワークを組み合わせたハイブリッドワークの選択肢も生まれ、一見すると働き手のワークライフバランスは向上したように見える。しかし、日本を含む世界8カ国でその副作用が露見し始めている。調査によれば、働き手の90%が“燃え尽き症候群”の兆しを感じているという。
調査を行ったのは、CRM(顧客関係管理)のクラウドサービスを提供する米HubSpotで18歳以上のフルタイムで働く従業員4008人を対象に実施。内訳はリモートワーカー1124人(28%)とオフィスワーカー1767人(44%)、ハイブリッドワーカー1767人(28%)。調査対象者が住む国は、米国や英国、アイルランド、フランス、ドイツ、カナダ、日本、オーストラリア。調査は2021年12月に実施した。
働き方の柔軟性は増したように思えるが、なぜ9割もの人たちが燃え尽き症候群の兆しを感じているのか。HubSpotの日本法人であるHubSpot Japanは「多くの従業員にとって、仕事とプライベートの切り替えが困難になっていることが原因にある」と指摘する。
回答者の26%が「リモートワークで通勤時間がなくなり、その時間を仕事時間に当てるようになった」という。また、子育てや介護をしながら自宅で働く人の60%が「常に『オン』でいるプレッシャーを感じる」と回答。「会社からのサポート不足や過剰労働は転職意向が高まる要因になる」と答えた回答者は75%に及んだ。
「この1年間でワークライフバランスが改善されたか」を国別で聞くと、日本で「改善された」と答えた人の割合は22%で最も低い数値に。最多となった英国の42%とは、20ポイント以上の差が開いた。
特集:“テレワーク大号令”の功罪見えた課題とこれからの働き方
この2年で多くの企業が導入したテレワーク。メリットもある一方で、以前に比べて失われたものや課題も浮き彫りになってきた。とはいえ、完全なリアルオフィス回帰もテレワークのメリットを捨てることになる。
テレワーク導入による組織課題を整理し、これからのあるべき働き方を探る。
日本の課題は「コミュニケーション」 カギはガイドラインの制定か
この結果を受けて、HubSpot Japanの廣田達樹代表は「ハイブリッド環境下で、従業員が心身ともに健康で安心して働ける職場の実現には、コロナ禍以前の出社での活動を単純にオンラインに置き換えるだけでは不十分」と説明する。
特に、ハイブリッド環境下での会議や電話の増加が仕事への集中を妨げている「会議疲れ」があると感じる回答者は70%に及び、58%の従業員は「参加した会議の半分がメールで済んだ内容だった」と答えている。
中でも日本は「ハイブリッド環境下のコミュニケーションガイドラインが整っている」と回答した従業員の割合が最も低く22%と、他国と20ポイント以上の差が開く結果に。マネジャーに対しての調査でも「コミュニケーションの課題が最大の懸念事項」と回答する割合は、日本が最多で61%にのぼった。
「従業員が最高のパフォーマンスをするためには、コミュニケーションツールやCRMなどのシステム導入は有効な手段であるが、ツールの導入だけでは不十分。ツールをどのようにうまく使うか、どのようなコミュニケーションを推奨しているか、ガイドラインや方針の設計が必要」(同社)
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