Apple、ダイビングコンピュータ市場に殴り込み? 「Apple Watch Ultra」登場のインパクト(2/2 ページ)
“タフ仕様のApple Watch”と噂されていたモデルが「Apple Watch Ultra」として登場した。しかし単なるタフモデルを超え、これまでとは別の市場に大きな影響を与える製品に仕上がっていることが分かった。
本格的なダイビングコンピュータ機能
Apple Watch Ultraはサーフィンに代表されるようなマリンスポーツで使用する場合でも水流の圧力に負けないよう設計しているが、対水深性に関しても100mのスペックを持つ。スキューバダイビング用アプリも内蔵する。
実は筆者はかつて、年間150本近く潜るほどダイビングにハマっていた時期がある。ダイビングにおいて水深記録と連動して体内の窒素量を推測するダイビングコンピュータ機能は自身の健康を守る上でも、スポーツとしてのダイビングを楽しむためにも重要だ。
Appleはダイビング機材メーカーとして知られる米Oceanicと共同でダイビングコンピュータの国際規格「EN13319」に対応するApple Watchアプリを開発した。EN13319は、どのくらいの水深にどの程度の時間滞在すると、体内の血中残留窒素がどの程度になるかという推測モデルを定めたものだ。
浮上時の安全停止時間(減圧症予防のため浮上前に水深3〜6mで3分ほど停止すること)や現在の深度などの表示はもちろん、Apple Watch Ultra単体で次のダイビングプランを練ることもできる。次のダイビングを何時間後に、水深何mでまで潜るかを設定すると、どのぐらいそこに滞在できるかなど推測値を出せる。
さらにGPSを用いてダイビングのエントリー点(水に入る場所)とエキジット点を記録。水深の履歴なども記録してくれるため、そのままiPhoneに転送してダイビングログを作れる。この機能と写真のタイムスタンプを照合すれば、ダイビング中に撮影した写真を自動的にログブックに記録したり、撮影した魚の種類を推測したりする機能にもつなげられるだろう。
より本格的なダイビングコンピュータでは、エアボンベの圧力を検知し、超音波でレギュレータから残圧や空気流量を送ることができるものもある。しかしここまでの機能がApple Watch Ultraで実現できるなら「専用品は必要ない」あるいはiPhoneとの連動性が高い分「こちらの方がいい」と思うダイバーも少なくないはずだ。
価格面でも、実は(機能が異なるとはいえ)ダイビングコンピュータとしては決して高くはない。日常的に使えるApple Watch+ダイビングコンピュータと考えれば、むしろ安く感じる。
ウォッチブランドとしてのApple
Apple Watchユーザーの多くがランニング記録などスポーツに使っているというが、一方でこれまでのApple Watchは比較的カジュアルなスポーツ体験に絞った設計になっていた。確かに便利ではあり、日常的に使うには十分で品質も高い。しかし、そこにプラスαのストーリー性やブランド価値を求める人は物足りなさを感じていたと思う。
しかしApple Watch Ultraは極めて真面目に作り込まれたアスリート向けのスマートウォッチだった。徹底した作り込みは、Apple Watchのブランド全体に好影響を与えるだろう。
かつてAppleのオーディオ機器はカジュアル、便利、快適だが「音質は無難」というイメージだった。そのAppleが渾身の製品として「AirPods Max」を投入した時と今回の状況は似ている。Apple Watch Ultraは、Appleが本格的なウォッチブランドとしての階段を登るきっかけになる製品かもしれない。
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