「エサを与えないと動かない」──粘菌搭載型スマートウォッチ 米シカゴ大が開発:Innovative Tech
米University of Chicagoの研究チームは、生体である粘菌で駆動するスマートウォッチを提案した研究報告を発表した。デバイスを動作させるためには、ユーザーが粘菌に餌を与え世話をして健康を保ち続けなければいけない。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
米University of Chicagoの研究チームが発表した論文「Integrating Living Organisms in Devices to Implement Care-based Interactions」は、生体である粘菌で駆動するスマートウォッチを提案した研究報告だ。デバイスを動作させるためには、ユーザーが粘菌に餌を与え世話をして健康を保ち続けなければいけない。健康であれば、粘菌によってデバイスに電力が供給されデバイスが機能(今回は心拍センサーが駆動)する。
世話する携帯型デバイスとしては90年代にたまごっちが流行ったが、今回はデジタルキャラクターではなく物理的な生物が搭載され世話をするというものだ。しかも、ボタン1つでエサを与えるのではなく、実際にエサを調達し生物に与えなければならない。加えて、生物の健康を維持しなければデバイスが機能しない仕組みを取り入れている。
ここでいう粘菌とは、モジホコリ(Physarum polycephalum)を指し、変形菌の一種である。仮足という膜や触手のように広がることができる性質を持ち、広げてエサを調達したり合体したりが行える。また乾燥すると休眠状態になり、長期間にわたって環境の変化に耐えることができる。
スマートウォッチには粘菌が2カ所に数センチ離れた状態で組み込まれている。粘菌は回路線の代わりを担っており、エサ(水や麦など)を与えないと乾燥し休眠状態(または死滅)になり粘菌同士は合体せず導電性を帯びない。一方でエサを与えると生き返り粘菌同士が合体し導電性を帯びる。この違いによって、スマートウォッチの駆動が決定する。
今回はスマートウォッチに心拍センサーを搭載し、機能中は着用者の心拍を計測するよう設定した。
実験では、参加者に粘菌搭載型スマートウォッチを9〜14日間着用してもらうユーザー調査を実施した。その結果、参加者の多くはデバイスに対して責任感を持ち、相互関係を構築し、生体の成長を効果として実感していることが分かった。
Source and Image Credits: Jasmine Lu, Pedro Lopes. Integrating Living Organisms in Devices to Implement Care-based Interactions
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