水に濡らすと電気が通る“紙電池” 2滴で1時間持続 スイスの研究機関が開発:Innovative Tech
スイスの研究機関「Empa」(Swiss Federal Laboratories for Materials Science and Technology)の研究チームは、水に濡らすと通電する紙電池を開発した。水を数滴垂らして活性化させると、この紙電池は1.2ボルトの電圧に達したという。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
スイスの研究機関「Empa」(Swiss Federal Laboratories for Materials Science and Technology)の研究チームが開発した「Water activated disposable paper battery」は、水に濡らすと通電する紙電池だ。標準的な単三形電池の1.5ボルトに対し、水を数滴垂らして活性化させるとこの紙電池は1.2ボルトの電圧を達したという。
この電池は、亜鉛を生分解性金属の負極として、グラファイトを正極材料として、紙を生分解性基材として使用している。電解質なしで作られているため、水を1滴加えると紙自体に塩分が染み込んで電解質となり電荷を持ったイオンが放出される。イオンが分散すると、負極の亜鉛が酸化して電子が放出される。
実験では、長方形の帯状の紙を用い、片面には陰極として機能するグラファイト粉末を含むインクを印刷し、裏面には陽極として機能する亜鉛の粉末を含むインクを印刷した。
電子機器に電力供給できるかを実証するために、紙電池を液晶ディスプレイ付きの目覚まし時計に接続した。その結果、2滴の水を加えると20秒以内に電池が作動して目覚まし時計に電力供給が行えた。
電池をエネルギー消費機器に接続しない場合では、1.2ボルトの安定した電圧に達することが確認された。一般的な単三形アルカリ乾電池の電圧は1.5ボルトである。
1時間後、電池の性能は紙の乾燥のため大きく低下したが、さらに2滴の水を加えると、さらに1時間以上、0.5ボルトの安定した動作電圧を維持することができた。
紙に付着させた亜鉛の量によって電池の容量が決まるという。紙と亜鉛は生分解性であり、適切なプロセスを経ればリサイクルも可能であるという。
Source and Image Credits: Poulin, A., Aeby, X. & Nystrom, G. Water activated disposable paper battery. Sci Rep 12, 11919 (2022). https://doi.org/10.1038/s41598-022-15900-5
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