ダンゴムシの足と遠隔で触れ合える装置 立命館大が開発:Innovative Tech
立命館大学小西聡研究室の研究チームは、ダンゴムシの足を遠隔操作で触れて、蹴り返してきた反力を計測する触覚デバイスを提案した研究報告を発表した。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
立命館大学小西聡研究室の研究チームが発表した論文「Active tactile sensing of small insect force by a soft microfinger toward microfinger-insect interactions」は、ダンゴムシの足を遠隔操作で触れて、蹴り返してきた反力を計測する触覚デバイスを提案した研究報告だ。胴体の屈曲する力の計測にも成功している。
このシステムは、ダンゴムシの足の動きを検出するセンシング用マイクロフィンガーと、ダンゴムシに触れるマイクロフィンガーを遠隔操作するオペレーター用インタフェースで構成する。
開発したマイクロフィンガーは、長さ12mm、幅3mm、厚さ490μmで、シリコーンを基盤に人工筋肉として柔らかい圧力駆動バルーンアクチュエーターと、液体金属を用いた柔軟なゆがみセンサーで構成する。
マイクロフィンガーの駆動は空気圧などの圧力を注入することで曲げ、あおむけに寝ている生きたダンゴムシの足を刺激する。その際に、押し返してきたダンゴムシの足の反力や胴体の屈曲力をゆがみセンサーで同時に検出する。マイクロフィンガーは柔らかいため、ダンゴムシを傷つける心配はない。
遠隔操作可能なオペレーター用インタフェースは、各指に収まる指サック形式で設計しており、装着者が指を曲げると、各指に対応したマイクロフィンガーが同時に曲がる仕組みである。この遠隔による相互作用を利用して、ダンゴムシの足と触れ合う。
実験では、指一本を用いた計測系により、13匹のダンゴムシを対象に脚力と胴体屈曲力の両方を測定した。ダンゴムシをあおむけに固定した状態で、上からマイクロフィンガーで触れて計測した結果、脚力は10mN以下で胴体屈曲力は10mN以上であった。この結果は、微力な足の力でも正確に測定できることを示唆した。
今回は人の指からダンゴムシの足への一方的なインタラクションにとどまったが、正確な脚力を測定できるため、ダンゴムシの足の力を人の触覚にフィードバックする、双方向のやりとりも可能だろう。
Source and Image Credits: Konishi, S, Mori, F, Kakehi, Y.et al. Active tactile sensing of small insect force by a soft microfinger toward microfinger-insect interactions.Sci Rep 12, 16963(2022). https://doi.org/10.1038/s41598-022-21188-2
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