微増益になるはずが──KDDI、障害対応・燃料高騰で約150億円消える 今後の対策にも500億円
KDDIが発表した2023年3月期上期決算は増収減益となった。7月に発生した大規模通信障害の補填や対応費用に加え、燃料の高騰が重なり、最終的には150億円近い営業利益が消えた。
KDDIが11月2日に発表した2023年3月期上期決算は、売上高が前年同期比4.4%増、営業利益も前年同期比微増になるはずだった。7月に発生した大規模通信障害の補填(ほてん)や対応費用に加え、燃料の高騰が重なり、最終的には150億円近い営業利益が消えた。
23年3月期上半期の売上高は2兆7408億円(前年同期比4.4%増)、営業利益は5585億円(前年同期比2.5%減)。利益の増減要因を見ると、通信障害と燃料高騰の影響を除けば営業利益は5733億円になるはずだった。
「通信障害と燃料高騰はさすがにわれわれも予期できなかった。(利益に)影響は出ると思うが、引き続き増益にこだわって進めていく」
KDDIの高橋誠社長は発表会でそう話した。同社は技術部、営業部、広報部などさまざまな部門を横断して「通信基盤強化ならびにお客さま対応強化対策会議」を組織。作業品質・運用・設備・お客さま対応の4観点でワーキンググループを設けて通信障害に対する検証と対応を進めているという。
同社は同日、総務省に通信障害に関する報告書を提出。再発防止策として(1)作業手順やリスク評価などの基準の見直し(2)輻輳(ふくそう)検知ツールの開発やシステム構成の見直し(3)輻輳解消ツールの開発(4)ユーザーへの情報発信方法の改善(5)災害時などの代替手段の確保(6)障害発生時を想定した訓練の実施などを挙げた。
KDDIは今後、通信障害対策として500億円を追加投資してネットワークの仮想化を進めるとしている。現在、同社の5Gネットワークは全面的に仮想化ができているが、VoLTEのネットワークは古いまま。もともと仮想化の予定はあったが、追加投資のうち300億円程度を使ってこの取り組みを加速する。
今後は、仮想化により運用の自動化や信頼性を向上させるとともに、AIを活用した障害検知の実現で対応の迅速化を図るとしている。
「5Gエリア拡大もしないといけないが、優先順位としては設備の強靭化に主眼を置いて、投資を先行してやっていく」(高橋社長)
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