耐量子計算機暗号にも弱点はある NTT、弱みを補いつつ冗長性も確保する暗号技術を開発中
NTTは、耐量子計算機暗号や既存の暗号方式を複数組み合わせて使う技術を研究している。両者の弱点を補いつつ冗長性も確保するためで、サービスなどへの適用を進める。
量子コンピュータの登場で、これまで通信や金融などあらゆる場所で使われてきた暗号技術が通用しなくなる可能性が浮上してきた。大きな数字の素因数分解には膨大な計算時間がかかるという前提で運用されている現在のRSA暗号は近い将来、量子コンピュータで解読できるようになると考えられている。
そこで現在研究が進んでいるのが耐量子計算機暗号(PQC:Post-Quantum Cryptography)だ。NTTは技術イベント「NTT R&Dフォーラム Road to IOWN 2022」の中で、PQCの現実的な運用方法について説明した。
NTTが開発しているのは「Elastic Key Control」(EKC)という技術。複数の暗号技術を組み合わせて使うことで、1つのアルゴリズムの安全性が崩れても情報などを守れるようにする仕組みだ。構想としては以前からあるものだが、実際に稼働できる状態まで実装が進んでいるのはあまり例がないとしている。
EKCでは、PQC等のさまざまな暗号アルゴリズムを組み合わせて使える他、方式の組み合わせ方を即時に切り替えられる。NTTでは次世代通信システム「IOWN」を支える情報セキュリティ技術として活用を進めている。映像などの伝送中に暗号方式の切り替えを行っても映像の乱れのような問題は発生しない構造を採用した。
複数の暗号方式を使うのは、コンピュータの進化を想定した仕様だという。RSA暗号は量子コンピュータの登場で安全性に疑問符が付いたものの、これまで数十年にわたる実績がある。対してPQCは量子コンピュータを使った攻撃には強いが歴史が浅く、まだ分かっていない部分もある。複数の暗号方式を使い、切り替えもできるようにすることで、両者の弱点を補いつつ、冗長性も確保するのがEKCの強みとしている。
今後はIOWNサービスへの適用や、VPN装置などの情報セキュリティ機器のEKC対応に向けて動いていくとしている。
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