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米国でレイオフされるとどうなる? 生活や転職先は? 現地のITエンジニアが解説シリコンバレーから見た風景(2/3 ページ)

米国のIT企業を中心に増えているレイオフ。その対象になってしまった従業員はその後どういうフローを経る必要があるのか、日本からは見えてこない実態について、現地のITエンジニアが紹介する。

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しごと発掘ラボ

そもそもレイオフとは何か?

 レイオフとは事業方針の見直しに伴い部門やチームなどの組織を無くしたり、業績不振のため人員を削減することを言います。Metaの1万1000人のレイオフやTwitterの従業員50%削減というのはかなり大規模なもので、英語では「Mass Layoffs」と呼ばれています。

 変化の激しい昨今です。経営者は事業方針やビジネスの状況に合わせて組織を最適化していかないといけないので、レイオフは必要なことだとは理解できますが、従業員からすれば突然仕事が無くなるのは耐え難いことです。

 Metaの場合はコロナ後の景気の回復に伴うオンライン需要の鈍化を見誤り、過剰に投資してしまったという理由でした。創業者でCEOのマーク・ザッカーバーグ自らが、これまで尽くしてきた従業員を大量にレイオフする事態になるとは驚きです。何か別の方法で回避できなかったのだろうかと思う一方、コロナ禍による景気や需要の大きな変動に会社の規模を合わせていく事が難しいことに改めて気付かされます。

 また企業がある日突然買収されるという状況はよく聞く話です。成長が期待できる場合はこれまでのブランド、企業文化、体制を温存することもありますが、業績の改善や事業の方針変換が必要な場合は、新しい経営者がレイオフを実施し大きく変えていくことが多いです。Twitterの場合は後者だと思いますが、やり方はかなり極端な印象を受けます。ハードなレイオフを許容する風潮が広まらないことを祈るばかりです。

 大規模レイオフはニュースでも大々的に取り上げられるので話題になりますが、それほど大きくはない数人から数十人規模のレイオフは日常的に起きています。成長途中のスタートアップが資金繰りが厳しくなりレイオフする場合もありますし、大きな企業でも社内の組織変更に伴って行うこともあります。突然発表されることがほとんどですが、会社によっては毎年決まったタイミングでレイオフを実施しているところもあります。

 幸い私はまだレイオフにあったことはありませんが、周りにはレイオフを経験した人は結構います。シリコンバレーで働いているとレイオフは「対岸の火事」ではなく「明日は我が身」なのです。

レイオフされるとどうなるのか?

 レイオフが実施されると通常「パッケージ」(Severance Package)と呼ばれる手当が支給されます。基本給の2カ月とか3カ月分のことが多いですが、これに加えて勤続年数に応じた追加分があることもあります。本来、訴訟を起こさないという同意書にサインするのと引き換えに受け取るものですが、実質的には次の仕事が見つかるまでの収入に相当します。社内の他部署での仕事を見つける人以外は、このパッケージを受け取って次の人生を考えることになります。

 同意書にサインすることもありパッケージの詳細は通常表に出てこないのですが、報じられているところによるとTwitterは3カ月分(追加分不明)、Amazonは3カ月分+勤続半年毎に1週間の追加分のようです。これに対してMetaは4カ月分+勤続1年毎に2週間の追加分なので良い条件と言えるでしょう。またMetaはパッケージの内容をマーク・ザッカーバーグの公式メッセージの中で明らかにしています。大規模レイオフに対して最大限の手厚いサポートをしていることを従業員及び外部に伝えたいのだと思われます。

 レイオフを受けて一番深刻なのはビザで働いていた従業員です。多くの渡米エンジニアが利用しているH-1Bビザの場合、勤務先がビザのスポンサーになっているのでレイオフになるとアメリカで働く資格を失います。60日の猶予期間中に次の仕事が見つからないと、アメリカから出国しなければなりません。シリコンバレーに夢を抱き、苦労して手に入れたビザを手放すのは辛いことでしょう。これは本人だけでなく子供を含め家族にも大きな影響を与えます。

 アメリカの市民権や永住権を持つ人はレイオフになっても生活は続けられますが、過去に成功して大きな財産を築いていたり、早期退職を考えていた人以外は、すぐに仕事を探すことになるでしょう。シリコンバレー周辺の住宅価格や家賃の異常な高さ、そして物価の上昇を考えると無収入の状態は長く続けられません。加えて医療保険の確保も重要です。日本の健康保険に相当するものは、アメリカでは勤務先から福利厚生として提供されているので、雇用関係が無くなると医療保険を失います。高額で有名なアメリカの医療費を全額支払うか、自分で保険会社と契約をして毎月高額な保険料を払う必要が出てきます。早急に次の仕事を見つける必要があります。

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