Fire TV化した「Echo Show 15」は、スマートスピーカー“終わりの始まり”か:小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)
米国で大規模レイオフが始まっている。Amazonは1万人規模のレイオフを計画していると報じられており、音声アシスタント「Alexa」を含むハードウェア部門が大半だ。音声アシスタントはGoogleも収益化に苦しんでいるというが、Amazon Echoも無事では済まなかったという事だろう。
Fire TV化はゲームチェンジャーか
話が変わってきたのは、9月にFire TVの機能を統合するアップデートがアナウンスされてからだ。実際のアップデートはつい最近のことで、最初設定メニューからアップデートを行なってみたが、アナウンスされていた機能が中途半端にしか実装されていなかった。
変だなと思って初期化してからもう一度アップデートしたら、アナウンス通りの機能が実装された。
以前からAmazon Primeはフル画面で視聴する事ができたが、他のサービスはブラウザ内でしか視聴できなかった。それが今のFire TV同様、他のサービスも横並びで利用できるようになった。加えて第3世代のFireリモコンもペアリングできる。手元にFire TV 4Kのリモコンがあったので、試しにペアリングしてみたところ、問題なく利用できるようになった。
アップデートされたEcho Show 15は、リモコンのホームボタンを押すだけで、Echo ShowのホームとFire TVのホームを行ったり来たりできる。要するにEcho ShowとFire TVのハイブリッド端末になったわけだ。こうなってくると、壁掛けにしておくのはもったいない。早速専用スタンドを使って、仕事机の脇に配置した。
早速ABEMAでワールドカップのハイライトをチラ見しながら、この原稿を書いているところである。こういう端末は、ありそうでなかった。世の中には15インチ程度の格安小型テレビはあるが、筆者の環境だとアンテナ線が届かない。アンテナをつながずFire TV Stickを挿すという手はあるが、それならEcho Show 15があるじゃないか、という事である。
こうした流しっぱなしディスプレイがそばにあると、ストリーミングサービスで見たいコンテンツも変わる。映画やドラマのようにガッツリ見るものではなく、聞き流せるニュース番組が欲しくなる。これまでFire TVでは「NHKプラス」など見たことがなかったが、こうしたデスクサイドディスプレイでは案外NHKプラスがキラーコンテンツになるのではないだろうか。
Echo Show 15のFire TV化は、これまで用途で迷走してきたスマートディスプレイに、一定の解を与えたといえる。今後EchoやAlexaの開発チームが縮小した場合、Echo Showの今後はFire TVチームにバトンを渡す可能性もある。
一方スマートスピーカーのEchoシリーズは、Alexaのサービスが停止しても、Amazon Music専用スピーカーという立ち位置が残る。むしろ空間オーディオ対応スピーカーは他社サウンドバーに取られている現状があり、「サービス+ハード」のエコシステムが壊れている。
Alexa事業がうまくいかないからといって、ハードウェアまで道連れになるには惜しい。Amazonは、「Alexa抜きのEcho」まで後退できるだろうか。しかしそこまで割り切っても、多くの人にとって、Echoの役割はそれほど変わらないのではないだろうか。
関連記事
- 15インチの壁掛けスマートディスプレイ、Amazonが発売 2万9980円
アマゾンジャパンは23日、スマートディスプレイ「Echo Show 15」の予約受付をAmazon.co.jpで始めた。価格は2万9980円(税込)。 - Amazon、大規模リストラを正式発表 AlexaやLuna関連部門が中心
Amazonがデバイス&サービス部門でのリストラを開始した。数日前、約1万人規模のリストラの計画が報じられていた。 - Amazonの秋のハードウェアイベントまとめ マルジナリア可能なKindleや睡眠サポートランプなど
Amazonが恒例の秋のハードウェア発表イベントをオンラインで開催した。書籍への書き込み(マルジナリア)可能な「Kindle Scribe」やスマートなベッドサイドランプなど多数の新製品が発表された。Kindle Scribeは日本でも発売する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.