「動画閲覧中は高く、タッチで検索中は低く」 自動で高さや角度が変わる三角形型タブレットスタンド:Innovative Tech
東北大学北村・高嶋研究室に所属する研究者らは、三角形が変形することで取り付けたモバイル機器(スマートフォンやタブレットなど)の高さや傾きが変えるデスクトップスタンド装置を提案した研究報告を発表した。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
東北大学北村・高嶋研究室に所属する研究者らが発表した論文「A Triangular Actuating Device Stand that Dynamically Adjusts Mobile Screen’s Position」は、三角形が変形することで取り付けたモバイル機器(スマートフォンやタブレットなど)の高さや傾きが変えるデスクトップスタンド装置を提案した研究報告だ。
動画を見る場合はモバイル機器を高く垂直に近い角度にし、目の高さで見れるようにする。スタイラスペンで絵を描く場合はモバイル機器を低く水平に近い角度にし、手の負担を抑えた作業が行えるようにする。このように、机上でモバイル機器を使用する際のユーザーの目的に応じた自動変形を可能にする。
スマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器は、一般的に両手で空中に保持する必要があるため、ユーザーに無理な姿勢を強いる。例えば、低い位置でデバイスを保持する場合はうつむきがちな姿勢になるため、テキストネック症候群のリスクが高まる可能性がある。また端末を目の高さで持つと、腕の疲れが生じる可能性がある。
モバイル機器の保持に関する簡単な解決策は、モバイル機器の位置を適切な高さと角度に保てるデスクトップスタンドを使用することである。これらのスタンドは、閲覧を中心としたタスクのために画面を高く垂直に配置するビュー優先タイプと、スケッチやタッチなどのアクティビティーのために画面を低く配置するインタラクション優先タイプの2種類が一般的に設計されている。
しかし、ビュー優先タイプかインタラクション優先タイプかのどちらかを選択しなければならず、2種類を切り替えられるデスクトップスタンドは存在しないのが現状である。またアームジョイントは手動でしか調整できないスタンドが多く、煩わしいのも課題である。
この研究では、モバイル機器の高さや傾きを自動的に調整し、ユーザーのインタラクションニーズ(タッチ、ブラウジング、ビューイングなど)に適応できる、新しい三角形のアクチュエータデバイス・スタンドを提案する。
プロトタイプは、メジャーを使った3つのリールとDCモーター、モータードライバー、マイコン、電源などで構成する。各リールの長さはDCモーターの回転量によって制御される。リール3つの長さを操作して三角形を変形することで、斜めになったメジャーに取り付けたモバイル機器の位置や角度の調整を行う。
プロトタイプを使った2つのデモが紹介される。1つは、ユーザーがモバイル機器のフロントカメラの映像に基づいて三角形の形を調整するアプリケーションである。ユーザーが手をかざした状態で上下に動かして高さの調整が行える。また顔の位置に応じて、高さや角度を自動で変更する設定も可能だ。
(A)装着したモバイル機器のフロントカメラでユーザーの手の位置(上か下かなど)を検出し、手動で機器の位置を上下させることができる、(B)顔の位置や角度をトリガーとして、モバイル機器の高さを調整することもできる
もう1つは、ユーザーがモバイル機器を用いてどのようなタスクを行うかに基づいて、モバイル機器の位置を自動的に調整する。具体的には、ユーザーがどの程度の頻度で画面に触れるかに着目し、タッチ操作の頻度に応じて適切なモバイル機器の位置と角度を決定する。
Source and Image Credits: Ryota Gomi, Kazuki Takashima, Kazuyuki Fujita, and Yoshifumi Kitamura. 2022. A Triangular Actuating Device Stand that Dynamically Adjusts Mobile Screen’s Position. In The Adjunct Publication of the 35th Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (UIST ’22 Adjunct). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, Article 63, 1?4. https://doi.org/10.1145/3526114.3558637
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