どっちが便利? 法務SaaS完全理解マニュアル クラウドサイン vs. DocuSign編:リーガルテック最前線(2/3 ページ)
近年リーガルテックと呼ばれる法務関連SaaSが盛り上がりを見せている。今回は電子契約、AI契約書レビュー、契約書の作成と管理の3つの分野で各2つ、合計6つのSaaSを取り上げる。
クラウドサイン
クラウドサインは弁護士ドットコム社が提供する電子契約サービスである。サービスの提供開始は2015年と早く、認知度、導入社数ともに圧倒的な国内ナンバーワンだ。
機能は非常にシンプルで、PDF化した契約書をアップロードし、チェックや記入が必要なカ所に入力欄を設定した上で、メールアドレスをベースに社内や相手方の承認者を設定し、契約書を送信するだけである。
相手方はクラウドサインのアカウントがなくても処理が可能であり、送られてきたメールに設置されたボタンを押し、ブラウザ上で記入・承認をする。全ての処理が終わると双方に締結済の契約書がPDFで共有され、双方がそれを保管することになる。
電子契約には印紙が不要であることに加えて、製本、郵送の手間とコストがかからず、印鑑を押すためだけに出社する必要もない。操作も簡単であることから、相手方のITリテラシーが高くなくても電子契約は可能であることも大きい。
一方で、メールアドレスだけで本人確認が十分なのか、誤送信のリスクや無権代理の問題はないのか等の批判も存在する。確かにメールアドレスにはなりすましの可能性はあるが、NDAなどの締結で印鑑証明まで取り寄せて照合している企業が一体どれほどあるというのだろうか。相手方の反社チャックや与信確認を行った上で契約を締結することは当然のことであり、そこは紙の契約書でも電子契約でも変わらない。
高度な認証機能や、相手方にもアカウント作成を求めるなどの対応を行わず、あえてシンプルに「デジタル上で契約の締結ができる」という部分に特化しているのが、クラウドサインの強みである。
契約書の作成やレビュー、社内の承認、相手方の認証など契約プロセス全体から必要な機能はいくらでも思いつくし、多くの要望を受けているはずだが、最もアロナグで効率が悪かった契約書の締結処理の部分に絞ってクラウドサインはサービスの提供を続けている。コロナ禍で電子契約を受け入れる体制が企業側にもできたことが追い風になり、ナンバーワンの地位を盤石なものにしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
AI契約書レビューはどこまで使える? 法務SaaS完全理解マニュアル LegalForce&GVA assist編
今回はAI契約書レビューについて取り上げる。AI契約書レビューシステムに関して「違法の可能性がある」という見解が示されたことを受け、一部報道においてはまるで違反であるかのような伝え方がなされた。この点も今回解説していく。
LegalForce、「LegalOn Technologies」に社名変更 AI契約書レビューの米国展開、勝算は?
LegalForceは12月1日、社名を「LegalOn Technologies」(LegalOn)に変更した。同社は米国での事情展開を進めており、米国事業とブランド名を統一するのが目的だ。
AIの契約レビューって違法なの? AI・契約レビューテクノロジー協会設立、適法性を発信
AIを使った契約レビューサービスを提供する主要4社が共同で、「AI・契約レビューテクノロジー協会」を設立した。AIによる契約レビューが弁護士法72条に違反するのではないかという懸念に対し、現状の各社サービスが適法であることを社会に発信していく。
LegalForce、「就業規則」の自動レビューに対応
AI契約書レビューサービス「LegalForce」において就業規則のレビューが可能に
SaaSの解約理由「操作性が良くない」5割超 「ツールがただ増えただけ」
営業支援ツールを提供するRevComm(渋谷区)の提供する音声解析AI「MiiTel for Zoom」は、現場の担当者を対象に「SaaSの継続・解約理由」に関する実態調査を実施した。その結果、SaaSを解約した理由の第1位は「操作性が良くない」(55.9%)であることが分かった。
マネーフォワード クラウド会計 vs. freee会計(前編)
クラウド会計という分野では必ず比較されるMFクラウドとfreeeであるが、「会計ソフト」という言葉で一括りにすることができないほど、思想や世界観は異なっている。本稿では両者の機能比較に加えて、その背景にある思想やターゲットなどをひも解いていく。
