信託銀行など7社がデジタル資産に本腰 共通基盤「Progmat」を開発する合弁会社
セキュリティトークン(ST)やステーブルコインといったデジタルアセットの普及に向けて、三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行、三井住友信託銀行など国内大手信託銀行が本腰を入れる。
セキュリティトークン(ST)やステーブルコインといったデジタルアセットの普及に向けて、三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行、三井住友信託銀行など国内大手信託銀行が本腰を入れる。
12月21日、信託銀行3社と三井住友フィナンシャルグループ、SBI PTSホールディングス、JPX創建、NTTデータの7社は、デジタルアセットの発行・管理基盤である「Progmat」の開発提供を行う合弁会社の設立に向けて共同検討を開始すると発表した。2023年9月以降、合弁会社を設立し、Progmatを業界標準のインフラとすべく、開発を進める。
Progmatは三菱UFJ信託が開発してきたブロックチェーンプラットフォームだ。これまで不動産のトークン化などで、ST市場を牽引してきた実績がある。しかし三菱グループ内にあるがゆえに他資本グループの信託銀行が利用するにはハードルがあった。今回、新会社にProgmatを移管することで、信託業界の標準インフラとして位置づける。
「Progmatはあくまで基盤であり、これを一社で独占すべきではない。信託業界全体で、Progmatを標準インフラとしていくことに意味がある」(三菱UFJ信託銀行の常務執行役員CIO兼CDTOの木村智広氏)
合弁会社は三菱UFJ信託の出資比率を49%以下とし、子会社とはしない。さらに、今後グローバルなテック企業からの出資も視野に入れ、IPOを目指すとした。
新会社CEOには35歳の社内起業家
新会社名はProgmat。CEOにはProgmatを立ち上げから牽引してきた35歳の齊藤達哉氏が就任する。
「われわれはスタートアップになる」と齊藤氏。7人の取締役も、齊藤氏を含め3名を三菱UFJ信託から送り込む。大手JVにありがちな寄り合い所帯になることを避けるためだ。50人規模の組織でスタートし、半数以上はエンジニアを想定する。
現在STのメイン市場は不動産をトークン化したもので、市場規模は430億円程度。今後32年時点では、証券化不動産投資市場の5%にあたる2.6兆円を見込む。
国内のSTプラットフォームには、野村HD系列のBOOSTRYが提供する「ibet」のほか、グローバルプレイヤーであるSecuritizeも上陸している。齊藤氏はProgmatの強みとして「デジタルアセットの幅」を挙げた。STだけでなく、ユーティリティートークン(UT)やステーブルコイン(SC)も取り扱えることがProgmatの特徴だ。「同じチェーンの中でUTやSCも利用できたほうがいい」と話す。
SCは、信託銀行各社がProgmatを使って発行することが可能だ。
現在のProgmatチェーンは、ブロックチェーンノードへの参加者が限定されるプライベート・ブロックチェーンだが、海外展開に向けては仮想通貨のようなパーミッションレスブロックチェーンを利用することを想定している。その際は円建て以外にドル建てのステーブルコインの発行も検討している。
異なるパーミッションド・ブロックチェーンをまたいでステーブルコインをやり取りするクロスチェーンや、イーサリアムなどのパーミッションレス・ブロックチェーンとのやり取りを可能にするマルチチェーンも構想中だ。
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