2つの“衝撃”をもたらした「楽天モバイル」の2022年 来年が真の正念場に(3/3 ページ)
KDDIの通信障害や円安によるiPhoneの値上げなど、波乱が相次いだ2022年の携帯電話業界。だが年間を通して注目され続けたのはやはり楽天モバイルであり、2022年は同社を巡って2つの衝撃的なニュースがあった。
黒字化期限はあと1年 本当の正念場はこれから
ただここまで挙げた話は、実は全て、楽天モバイルが抱える1つの問題に帰結している。それは「赤字の拡大」だ。
実際楽天グループの決算を見ると、直近となる2022年12月期第3四半期で2871億円の赤字を計上。前年同期は1083億円の赤字だったことから、この1年で赤字幅が倍以上に拡大しており、楽天モバイルへの先行投資でグループ全体の経営が非常に厳しい状況に陥っているのだ。
そうしたことから楽天グループは2022年、資金調達を急ピッチで進める動きが相次いでいた。既に上場を打ち出していた楽天銀行を2022年7月4日に新規上場申請したのに続き、2022年5月24日には楽天証券ホールディングスの上場準備も明らかにしたのにとどまらず、2022年10月7日にはさらにみずほ証券からの出資受け入れも発表したのである。
楽天グループ2022年度第3四半期決算説明会資料より。上場準備を明らかにしたばかりの楽天証券ホールディングスだが、その前にみずほ証券との資本業務提携を発表、資金繰りを急いでいる様子を見て取ることができる
ソフトバンクグループの孫正義氏が決算会見への登壇を当面しないと発表するなど、2022年は世界情勢不安などで株式市場が低迷しているにもかかわらず、批判の声も少なくない親子上場を相次いで打ち出し、上場前から出資も募っている。そんな楽天グループの動きからは、資金繰りのためなりふり構っていられない様子を見て取ることができるだろう。
そして月額0円施策の廃止は楽天モバイルの事業で確実に収益を得る、プラチナバンドは今後のインフラ整備にかけるコストを下げる狙いが大きいもの。さまざまな方面から多くの批判を集めながらも、なりふり構わぬ姿勢でこれらの施策を進めたというのも、楽天グループの赤字に対する危機感の表れと言える訳だ。
だが楽天グループにとって、楽天モバイルの赤字解消に向け残された時間は少ない。というのも楽天モバイルはかねて2023年の黒字化を目指すとしており、その期限まであと1年と迫っている。もし黒字化を達成できないとなれば、楽天グループそのものの信用に影響が出てくる可能性もあるのだ。
もちろんこの間に、基地局整備の大幅前倒しでローミング費用を大きく削減し、4Gの人口カバー率も98%に達したことから、今後ネットワーク整備にかけるコストを大幅に削減する見通しはしっかり付けている。それに加えて月額0円施策の廃止で今後確実に売上が立つことから、赤字幅も確実に減少していくだろう。実際、楽天モバイルを含む楽天グループのモバイルセグメントの四半期業績推移を見ると、2022年1〜3月期に赤字のピークを迎え、それ以降は減少傾向にある。
だが一方で、月額0円施策を止めたことで契約を大幅に伸ばす強力な武器を失ってしまったことも確かで、契約を伸ばせなければ収益を大幅に高めるのも難しい。加えてエリア面で他社と比べ不利という状況は現在も変わっておらず、プラチナバンドや衛星通信を活用した「スペースモバイル計画」が利用できる目途も明確に立っている訳ではない。
それだけに2023年は、楽天モバイルにとって市場での生き残りをかけた真の正念場となることは間違い。黒字化達成のためどのような施策を打ち出し、それが市場にどう評価されるのか、2022年以上に同社の動向は関心を呼ぶこととなりそうだ。
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