iPhoneだけではない、アップルジャパン140億円追徴課税の裏で暗躍する中国人転売ヤー:浦上早苗の中国式ニューエコノミー(6/6 ページ)
22年12月、アップルジャパンが消費税を追徴課税されたと報じられた。免税の対象にならない「転売目的の購入」を見抜けなかった責任を問われたとみられている。取り締まる当局と転売ヤーのいたちごっこはこれまでも繰り返されているが、今後、中国人転売ヤーはどうなるのだろうか。
不正行為の組織化
この数年は、留学生など個人が百貨店を回って高級時計を免税の限度額ぎりぎりまで購入するなどの事例が報告されている。
22年には日本の百貨店などで総額77億円分の高級ブランドを免税購入した中国人7人が、消費税7億円の徴収処分を受けた。冒頭のアップルジャパンもそうだが、業者がSNSなどで「買い子」を集め、組織的に不正行為を行っていると見られている。
「買い子」は店舗を買い回るなど不審に思われないように行動するため、店舗側が「転売目的」と見抜くのは難しいが、アップルジャパンについては1人で数百台を購入した事例があり、「店側の落ち度」と判断されたのだろう。
店側の負担を減らすため、日本政府は23年4月から、免税対象者から留学生や一時帰国の日本人を除外し、「短期滞在」の在留資格を持つ人に限定する。
「代購」の主役であった留学生を免税の対象外とすることで一定の効果はあるだろうが、「上に政策あれば下に対策あり」なのが中国であり、日本での購入に割安感がある限り、新たなすり抜け行為が出てくるだろう。
筆者:浦上 早苗
早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37。
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