権利的にクリアな“AI絵師”を作る 「絵藍ミツアプロジェクト」進行中:いじって楽しいAI図鑑
アブストラクトエンジンが、パブリックドメインの画像とイラストレーターが学習用に提供した画像だけでイラスト生成AIを作る「絵藍ミツアプロジェクト」を実施している。
ここ数カ月、画像生成AIが広く注目を集めている。自動で欲しい写真素材やイラストを合成できる上、上手に扱えば、工夫次第でクオリティーを上げることもでき、やりこみ要素もあって触るだけでも楽しい。
AIにもさまざまあるが、本連載では面白いAI、癖のあるAIを紹介する。ぜひとも使ってAIが得意なことや、その裏に見える将来の可能性、人間にも負けないちょっとした恐ろしさなどを、感じとってほしい。
著作権的にクリアな画像だけ学習したAIに
デザイン・都市開発などを手掛けるアブストラクトエンジン(東京都渋谷区)がイラスト生成AIを作る「絵藍ミツアプロジェクト」を実施している。パブリックドメインの画像と、イラストレーターが学習用に提供した画像だけをAIに学習させる。
3月にはYouTubeでも活動を始める。コメントからイラストの方向を定め、イラストを生成する様子を配信する予定。モデルはAI関連コミュニティサイト「Hugging Face」で公開している。
初期モデル「Mitsua Diffusion CC0 v1.0」の学習素材は、パブリックドメインとして公開されている画像、アブストラクトエンジンが権利を持つ画像など約1100万枚。加えて、Twitterで協力者を募集し、審査を通ったイラストレーターが作った画像を徐々に学習していく。協力者には返礼品などの特典を予定している。
アブストラクトエンジンは、現状のイラスト生成AIについて「法的に問題ない場合でも、倫理的問題が指摘されている」と指摘。「権利的、心理的にクリーンなデータで(Stable Diffusionの既存モデルを流用するのではなく)ゼロから学習し、協力者に返礼をすることで倫理的問題の改善を目指す」としている。
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