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「医療のデータベース化は国の命運に関わる」──テクノロジーは医療をどう変える?プラマイデジタル(1/3 ページ)

日本の医療現場がDXに向けて大きく動きだそうとしている。「医療のデータベース化は国の命運に関わる」と前向きな声も上がっている。テクノロジーが解決できる医療現場の課題とは何か。医療×DXの最前線に立つ医師に聞いた。

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 日本の医療現場がDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けて大きく動きだそうとしているのを感じる。きっかけは新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の拡大だ。

 今や受診の選択肢として当たり前になっているオンライン診療だが、1997年の開始当時は運用条件がとても厳しく、15年に規制緩和されてからようやく関連サービスやアプリのリリースが増えはじめた。とはいえ19年7月にオンライン診療ガイドラインが改定されてからも、原則は対面か受診歴のある患者のみが対象で、診療できる科も制限があった。

 それがコロナの感染拡大に伴い、時限措置として20年4月より初診からオンライン診療が可能になり、22年1月には「原則としてかかりつけ医が行う」としつつも事実上の解禁となった。あわせて23年1月26日には、処方箋を紙からデジタルで管理する「電子処方箋」が導入され、本当の意味で家にいながら治療が受けられるようになった。

 さらに4月から全ての医療機関と薬局において、マイナンバーカードが健康保険証として利用できるようになる予定だ。デジタル庁は、24年秋には紙の保険証を原則廃止にするとしており、医療現場は否応なくデジタル化に向かっている。

デジタルツールの差が診療の差になる

 1月に大阪で開催された、医療分野の専門展示会「メディカルジャパン」でも、医療の現場がデジタル化に向けて動いているのがよく分かった。22年からオンライン診療に対応するシステムやアプリ、AI問診などの出展はあったが、一部の先進的な取り組みをする医療施設以外はまだ様子見のようなところがあった。

 それに対し23年は、マイナンバーや電子処方箋への対応、オンライン診療をサポートするデジタルツールといった、すぐにでも使える展示が増え、熱心に情報収集する参加者の姿が多く見られた。


メディカルジャパンの展示は医療現場のデジタル化がより現実的になっていることが感じられた

 本格的にオンライン対応が進むと、近所で通いやすい病院ではなく、便利で腕の良い病院が選ばれるようになる。以前はコストを抑えるためPCやスマホのデフォルト機能を使うサービスが求められていたが、よりに質の高い診療を提供できる高機能なツールにも目が向けられるようになってきているという。

 実際に会場では、3DカメラとマイクロソフトのMRヘッドセット「HoloLens」を使ったり、高精細度なリモートカメラを活用して患部を詳細に診るといった機器にも関心が集まっていた。


離島のために早くからオンライン診療に取り組んできた長崎大学はHoloLensを使って患部を詳細に診るシステムの実証実験を行っている

高精細度なリモートカメラのカメラ部分をとりはずして患部を映し出せる機器も登場
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