NECが「SFプロトタイピング」実践 “SFのビジネス活用”が生む効果とは? 企画者が語る「相性の良さ」:「SFプロトタイピング」で“未来のイノベーション”を起こせ!(3/3 ページ)
NECが、ビジネスにSFを活用する「SFプロトタイピング」に取り組みました。イベントの他、社内2000人超のワークショップも開催し、アイデアが湧き出しました。企画者はブランディング施策として大成功だったと話します。
NEC社内2000人超でワークショップ実施 “堅い企業”のイメージ覆る
大橋 J-WAVEさんのセッションで行ったSFプロトタイピングのワークショップを、リモートでNECのエンタープライズビジネスユニットの社員2000人以上を集めてされたのだとか。普通、2000人超のワークショップなんてあり得ないですよね。
杉山 あり得ないですよね(笑)。J-WAVEさんのセッションでお世話になった宮本道人さんにファシリテートをお願いしたのですが、宮本さんも初めての試みだったそうです。
実際にやってみると、ものすごい数の「趣味の言葉」と「未来の言葉」が出てきました。手前みそですが、NEC社員のエネルギーを肌身で感じました。
最初は「コメントがなかったらどうしよう」と心配していました。変な話、誰かを仕込もうかと考えたくらい(笑)。でも、その必要はありませんでした。自由な発想や先が読めない展開がSFプロトタイピングでは大事です。NEC社員が自由な発想をできたということは、個人的にうれしかったところです。
冨成 NECには「堅い企業」というイメージがあります。実際に堅いのですが……(笑)。でも、「意外と熱量のある社員が多い会社なんだ」ということが分かりました。
田中 コメントが多いのには驚きました。企画した側としては「反応がなかったらどうしょう」と思っていたのですが、ガンガン書き込みしてくれて。「みんな、好きなんだな。自由な発想を持っているんだな」と思いました。
徳成 参加者でSFプロトタイピングを知っている人はいなかったと思います。「SFプロトタイピングをやります」と言われても「なんのこっちゃ?」と思ったはずですが、実際にはたくさんの人が書き込んでくれて、楽しんでくれた。SFプロトタイピングは誰にでもできるということが改めて分かりました。
大橋 参加された方の感想などはありますか?
杉山 アンケートでは回答者の約90%が満足と答えました。若い人たちの声として「NECがこんなに楽しい会社だと思わなかった」「自由な発想を持っている人がこんなにいるというのが意外だった」というコメントなど、とても好意的な反応が多かったですね。
ブランディング施策として大成功 社内での横展開も視野に
西田 面白いことを言う機会というのは、普段のお仕事ではなかなかありませんからね。チャットならネタ職人的な気分で書くということはあるでしょうが……。出てきたアイデアは今後、どうされるのですか?
冨成 アイデアを形にすることはないとは思います。ビジネスとして形にするときは別のアプローチが必要になるでしょう。最終的に「楽しかった」で終わってもいいと思っています。でも一つ気付いたこととして、XRを使った表現の方がエモーショナルになると思っていたのですが、想像で十分だったことです。
むしろ想像のエモーショナルの方が強い。結局は中身、コンテンツです。人の想像を超えることはできないと思いました。もちろん、XRにも可能性はあると思っています。
杉山 SFプロトタイピングはブランディング観点で見ると、一つのブランディングのツールになると思いました。ただ、これがビジネスにつながるかは別。それでもブランディング施策では大成功だと考えています。SFプロトタイピングは楽しく取り組むことができます。一方でビジネスにつなげようとするとエッジを利かせる必要があります。だから、楽しく柔らかくスタートして、そこからエッジを利かせるのはアリだと思います。ブランド施策として、ビジネスに活用できるかもしれないとか、NECらしさを考えてもらうとかがポイントではないでしょうか。
西田 自由な発想ができる場所があるということは大事だと思います。
杉山 SFプロトタイピングを社内で横展開する可能性はあるでしょう。
塩野入 今回は2000人以上に参加してもらいましたが、体験することが大事だと考えました。SFプロトタイピングを活用することで、いま取り組んでいる事業の延長線上に未来を考えることができる。そこからお客さまなどいろんな人を巻き込みながら新しいことを始めるためのツールに使えるんじゃないかという感覚を、製造業や物流、金融、流通サービスに関わる人たちが持ってくれたことが成果だと思っています。われわれが関与しなくても今回知ったSFプロトタイピングを使う人は使っていくでしょう。そこから新しい「何か」が生まれるかもしれない。社内で取り組んだのにはそこに価値があったということです。
「NECは面白そうなことをしているな」「NECと話すと面白そうだな」と思ってもらう、ファンになってもらうところにつながっていけば良いと思っています。今後もファンづくりでSFプロトタイピングを活用できればと考えています。
田中 ブランディング的にはNECが新しいことに取り組んで、お客さまと一緒にワクワクしていこうということをアピールできたのは良かったと思っています。イベントやプロモーションの観点で10年先の製造業はどうなっているのかを日々考えています。SFプロトタイピングを体験したことで社員個々人が「ここで使ってみよう」と思ってくれればうれしいです。SFが現実になるのは事実だということはみんな知っています。興味を持って発展させるのは良いことだと思います。
堅い企業イメージをエンタメで味付け NECが見つけた強み
徳成 SFプロトタイピングに挑戦できたのはすごく良かったと思っています。「ワクワクする」「楽しそう」「ビジネスにつながりそう」ということを印象付けられたと思っています。NECとして新しいことにトライしていくことで引き続き、ワクワクを感じてもらえるよう、ブランディングで訴求して行きたいと思います。
杉山 NECにはアドバンテージがあると思います。NECにある堅いイメージをいい意味で裏切っていく。すると「NECって思っていたのと違った」「NECって新しいんだ」と思ってくれる。より詳しく知ってもらうきっかけになるのではないでしょうか。
西田 いま、NECさんが行っている事業は、見方を変えれば全部SFの世界になると思います。ここでいう「SFの世界」というのは、エンターテインメントの中のお話という意味です。お堅い企業イメージをエンタメで味付けしたものを出していくと、多分ものすごいブランディングの一つになる。表現としてすごくいいんじゃないかなと思っています。エンタメにできてしまうというのが、NECさんの強さだと感じました。
大橋 ありがとうございます。
NECさんではブランディングの一つとしてSFプロトタイピングを活用しました。社外とのコミュニケーションはもちろん、社内でのコミュニケーションを活性化させる方法の一つとしてSFプロトタイピングを用いてみるのも良いかもしれません。
SFプロトタイピングに興味がある、取り組んでみたい、もしくは取り組んでいるという方がいらっしゃいましたら、ITmedia NEWS編集部までご連絡ください。この連載で紹介させていただくかもしれません。
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