NECが「SFプロトタイピング」実践 “SFのビジネス活用”が生む効果とは? 企画者が語る「相性の良さ」:「SFプロトタイピング」で“未来のイノベーション”を起こせ!(2/3 ページ)
NECが、ビジネスにSFを活用する「SFプロトタイピング」に取り組みました。イベントの他、社内2000人超のワークショップも開催し、アイデアが湧き出しました。企画者はブランディング施策として大成功だったと話します。
SFから未来を考える ビジネスに生きるワクワク感
大橋 SFプロトタイピングはご存じだったのですか?
塩野入 「SFプロトタイピングというものがあるらしい」と知っていた程度です。しかし、ワクワクをどう訴求するかを考えたとき、未来への共感やNEC 2030VISIONに照らし合わせるとSFプロトタイピングがハマるんじゃないかという直感がありました。
田中 私は正直、SFプロトタイピングというアイデアが出てくるまで知りませんでした。「どういうものだろう?」というところから入ったのですが、ビジネスユニットでは、例えばプロモーション観点で10年先の製造業を考えるといったことをしていたので「SFから未来を考える」という発想は面白いと思いました。
徳成 私も知りませんでしたが、SFプロトタイピングは私たちのビジネスにつながりそうだと直感的に思いました。実はイノフェスビジネスデーのテーマには、他にもさまざまなアイデアがあり、例えば恐竜の歴史を題材にするといったものもありました。その中でSFプロトタイピングはビジネスにもつながり、一番ワクワクしそうなアイデアでした。
“インプットだけのセミナー”にない力 誰でも取り組めるSFプロトタイピング
大橋 実際にJ-WAVEさんのセッションでSFプロトタイピングをやってみていかがでしたか?
田中 シンプルに面白かったです。出演者が「コンビニ新スイーツ試し買い」と「宇宙旅行」といったキーワードを出し、即座に結び付けて「試し買い旅行」という新しいガジェットにする。身近な言葉に共感できますし、予想外の言葉の組み合わせがあるなど、先が見えない感じもあってとても興味深く思いました。
徳成 よくあるWebのセミナーはインプットだけなのですが、今回のセッションは「私ならこういうキーワードにする」と考えながら視聴したので参加した気分になれました。その意味では、SFプロトタイピングは誰でも取り組むことができる。それはメリットだと思いました。
大橋 西田さんはJ-WAVEさんのウェビナー動画を見て、ワクワクは感じましたか?
西田 とても感じました。例えばロボット動物園というガジェットは、セッション内ではロボットの動物を活用するストーリーでした。私がロボット動物園から想像したのは、私自身がロボットを操作して、VR的に動いて動物を見に行くことでした(笑)
冨成 西田さんから見て、企業がSFを使うことをどう思われますか?
西田 実は私もSFプロトタイピングがあるということを知りませんでした。ただ、SFをジャンルだけで見てしまうと、ジャンルコミュニティーにとどまってしまうという問題があります。現実にはSFは映画やドラマ、アニメで広く浸透している。なのに、SFは一般とは離れた存在として捉えられてしまう。だから、企業がSFを活用するということは「いいな」と思いました。
あと、SFの世界だと企業は悪の組織として登場することが多いんです。人々の生活を牛耳っているみたいな(笑)。でも、NECさんは人々の生活のいろんなところに浸透している。現実世界では影で支えているんだなと思いました。
面白いという直感 どうなるか不安 セッションの狙いは?
大橋 SFプロトタイピングを活用してNECのことをどう伝えようと考えたのですか?
塩野入 セッションに登壇したのは、NEC社員の海老沢美佐子さん(グローバルトランスポートインテグレーション統括部 シニアディレクター)と八巻千夏さん(スマートILM統括部)です。海老沢さんはインドやアジアパシフィックなどグローバルで、交通ICやグローバル物流ITで実績があります。SFは未来を空想することですが、それを実際に行っているような方です。彼女を通して「NECには未来的な人がいる」ということをアピールする狙いがありました。
一方、八巻さんは入社2〜3年目の若手です。でも、芯があって自由な発想を広げることができる。海老沢さんが培った実績の中から出る発想とフレッシュさから出る発想を組み合わせると、どんなことが起こるのかを考えてみたかったという思いがあります。でも実のところは、シナリオは作っていたもののスタッフはドキドキしていました(笑)
大橋 シナリオがありながらも展開が読めなかったということですね。
冨成 リハーサルもしましたが、アウトプットが最後まで分からなかったですね。不安なまま進行し続けていました。ちゃんとしたコンテンツになるのかと最後の最後まで落ち着きませんでした。
杉山 聞いていたのと実際にやるのとは全然違うなと思いました。一番大変だったのは社内での説明です。セッションでSFプロトタイピングをテーマにワークショップを行うのなら、何をやればいいのかを海老沢さんや八巻さんにも説明しないといけない。なのに、われわれが分かっていない(笑)。でも、みんなが言うように、面白いだろうという直感だけはありました。そこに向かって走ったというところです。
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