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打ち上げ中止「H3」会見で共同記者の質問に批判相次ぐ ロケットを救った「フェールセーフ」とは(1/2 ページ)

打ち上げ中止となった次期主力ロケットの「H3」。17日午後2時からJAXAの公式チャネルで記者会見が配信されたが、そこで話題となったのが共同通信のとある記者の質問だ。

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 2月17日の午前10時37分に打ち上げ予定だった、JAXAの次世代主力ロケット「H3」の試験1号機が、発射直前に突然打ち上げ中止となった。ライブ配信では、補助ブースター「SRB-3」が点火しなかったためとのアナウンスがあったが、その後、異常を検知してシステムがSRB-3への着火信号を送出しなかったことが判明している。


次期主力ロケット「H3」

JAXAの岡田匡史氏(H3プロジェクトチームプロダクトマネージャ)

 午後2時から行われた会見では、JAXAの岡田匡史氏(H3プロジェクトチームプロダクトマネージャ)が登壇し、経緯を説明。同氏によると、ロケットの自動カウントダウンシーケンスは予定通り開始され、メインエンジン「LE-9」が着火し正常に立ち上がったあと、ロケット下部(エンジン上部)に設置された1段制御用機器が異常を検知。SRB-3への着火信号を送らなかったことから、打ち上げ中止となった。なお、SRB-3側にも異常はなく、制御用機器が検知した異常そのものについては原因究明中という。


異常を検知したのは「1段制御用機器」

 会見はJAXAの公式チャネルで配信されていたが、話題となったのが共同通信のとある記者の質問だ。「中止と失敗という問題についてもう一度確認したいです。ちょっともやもやするものですから」と切り出し、岡田氏に中止と失敗の違いについて質問した。以下はその一問一答だ。

共同 中止という言葉は、みなさんの業界でどう使われているかは別として、一般に意図的に止める、計画を途中で意図してやめる時に中止といいます。今回はカウントダウンも続いているし、飛ぶはずの機体が飛ばないなという状況に見えますが、正体不明の異常が起きて、システムが正常に作動して止まったのかもしれませんが、意図しない異常による中断、中止ということだったのでは。意図的ではなく止まっちゃったよということは一般に言う失敗ではないかと思うのですが、どうですか?

岡田 こういった事象が時々ロケットにはあるのですが、その時に自分たちは失敗と言ったことがありませんので。やはり、われわれが非常識かもしれませんが。

共同 それを失敗と呼ばれたからと言って、何か著しく不具合があるわけではないですよね。みなさんの中では失敗と捉えてないけれども、失敗と呼ばれてしまうことも甘受せざるを得ないという状況ではないですか。どうですか?

岡田 どのような解釈をされるのかは、受け止めた方、受け止められ方はもちろんあると思いますので、そうではないですとは言い難いですけれども、ロケットというものは基本安全に止まる状態でいつも設計しているので、その設計の範囲の中で止まっている、つまり意図しないというのはその設計の範囲を超えて、そうじゃない状態になることは大変なことになると思いますが、ある種想定している中の話なので、そこに照らし合わせますと失敗とは言い難いと思います。

共同 わかりました。確認ですが、つまりシステムで対応できる範囲の異常だったけれども、考えていなかった異常が起きて打ち上げが止まった。こういうことですね。

岡田 ある種の異常を検知したら止まるようなシステムの中で、安全、健全に止まっているのが今の状況です。

共同 わかりました、それは一般に失敗といいます。ありがとうございます。

岡田 ありがとうございます。

 今回のH3ロケットは、メインエンジンは着火したものの発射はしておらず、打ち上げが見送られた状態といえる。岡田氏は他の記者からの質問に対し、「失敗というのはいろんな定義もあると思うが、打ち上げにおいてカウントダウンシーケンスで止まったものは打ち上げ中止と思っている」と説明している。

 誘導ともいえる質問に対し、YouTubeのコメントだけでなくそれを視聴していたTwitterユーザーも記者に対し苦言を呈した。特に最後の「それは一般に失敗といいます」という文言に言及するユーザーが後を絶たず、「ひどい質疑だった」「捨て台詞を投げてびっくりした」といったコメントが多く投稿された。また、共同通信が初報で「発射失敗」と報じてTwitter上で批判を浴びたことと質問を関連付けるユーザーも見られた。


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