中国版ChatGPT、異常な盛り上がりでカオス 出オチでClubhouseの二の舞も……:浦上早苗の中国式ニューエコノミー(6/6 ページ)
米OpenAIが開発した、自然な対話や文章作成ができる対話型AI「ChatGPT」が世界に衝撃を与えている。中国でも大きな変革のうねりに乗り遅れまいとお祭り騒ぎで、カオスっぽくなっているが、中国の反応は日本のそれとはベクトルが異なる。
大物起業家も突如参戦
メガテックの中では中国EC2位の京東集団が産業版「ChatGPT」の開発を目指しているほか、アリババグループのグローバル研究機関であるアリババDAMOアカデミー(中国語:達摩院)も、対話型AI技術が内部テストの段階まで進んでいると報じられている。
その他、TikTokを運営するバイトダンス、WeChatを運営するテンセントなど、メガテックはAI生成コンテンツに何らかの形で投資しているだろうが、はっきり表明しているのはバイドゥと京東くらいだ。
投資家たちは中小・スタートアップでもChatGPTの恩恵を受ける企業がないか必死に漁っているが、最近面白い動きもあった。
フードデリバリーの美団(Meituan)の共同創業者である王慧文氏が、「中国版オープンAI」をつくると表明したのだ。
連続起業家でもある王慧文氏は20年に40代でFIREして悠々自適の生活に入っていたが今月、自身のSNSで「中国版ChatGPTをやっているチームに加わりたい。お金も出す」と投稿し、しばらくすると自身で会社を設立したことを明らかにした。王氏はVCから2億3000万ドル(約300億円)の調達が決まっているとしたうえで、トップ級の人材を募っている。
一時代を築いた経営者である王慧文氏は、日本でいえば一太郎を開発したジャストシステム創業者の浮川和宣氏、mixi創業者の笠原健治氏、あるいは前澤友作氏……そこは読者が適当に想像してほしいが、著名起業家×300億円の資金調達のパワーワードぶりで、話題になっている。
今はメディアも投資家も、引っ掛かりそうなネタを次々に紹介し、飛びついているので、この中からどれほどの成果が出るのかは分からない。
AIは政府の強化分野ではあるが、「中国版ChatGPTは政治的な質問をされたらどう答えるのか」というような、中国独特の課題もあり、何かやらかせば規制対象になりかねない。
カオスの中から、中身のある技術やサービスが1つでも現れ、ブームやバブルに終わらないでほしい。というのが、筆者だけでなく当事者である企業の思いでもあるだろう。
筆者:浦上 早苗
早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37。
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