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仕組みは単純、なのに魅力的 サンプラーの元祖「メロトロン」の愛おしさ、アプリまで自作した筆者が語る古代サンプラーがアプリになるまで(2/4 ページ)

実機を手に入れたことがきっかけで、約1年前にメロトロンアプリの開発を始めたが、22年10月に、iOS/iPad OS版、Android版ともに無事リリースできた。連載の最終回は、メロトロンという唯一無二の楽器が持つ魅力や逸話、そして、3Dプリントしたミニチュアモデルなどを紹介して連載の幕を引きたい。

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今でも音源テープを注文できる

 チェンバリン氏自身は、ロックが嫌いだったそうだが、この「古代のサンプラー」を有名にしたのは、図らずもロックアーティスト達だった。シンセサイザーが発展途上だった時代だけに、さまざまな音色を奏でることができるこの楽器に多くのアーティストが飛びついた。

 筆者の実機には、標準装備である3種類の音色、ストリングス(3 Violins)、フルート、チェロの3音色が収められている。1本のテープは3トラックに分けられている。ストリングスの正式名称を「3 Violins」としているのは、チェンバリン氏の自宅スタジオで3人のバイオリニストを使って「Neumann U47」マイクロフォンを使って録音された史実に由来する。3 Violinsは、初期のChamberlinはもちろん、メロトロン全盛の時代になっても代表的な音色として、そのまま引き継がれている。


専用アルミフレームに、35本の3/8インチテープがパーテーションに区切られた形で納められている

 他にも、フルート、チェロ、混声コーラス、ブラスなど、さまざまな音色が用意されており、ユーザーは好きな音色の組み合わせを選んで、英国のStreetly Electronicsやスウェーデンの 「mellotron.com」に現在でもテープをオーダーすることができる。例えば、3音色入りのテープは250ドル、そのテープを収めるアルミのフレームは400ドル、といった具合だ。

 テープの幅は、3/8インチという特殊なものだ。なぜ、一般的なオープンリールテープの1/4インチではないのだろうか。特殊な幅にすることで、第三者が簡単に音源を提供できないようにしたという説もある。

 他にどのような音色が用意されているのかは、Streetly Electronics Mellotron Tape Libraryで確認することができる。ここでは古い音源はもちろん、近年、録音された新しい音源も紹介されている。中には、元祖デジタルサンプリングシンセの「Fairlight CMI」から録音したものもあり、こうなるとデジタル生成した音源をアナログテープに録音して再生するという、どこか倒錯した世界が広がる。


Streetly Electronics Mellotron Tape Libraryでは、新旧取り混ぜてさまざまなテープ音源を聴くことができる

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