“こっそり録音”するスマホを撃退できる盗聴防止装置 中国の研究者らが開発:Innovative Tech
中国の浙江大学とHIC-ZJUに所属する研究者らは、スマートデバイスで盗聴する行為を防止するための装置を提案した研究報告を発表した。
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。Twitter: @shiropen2
中国の浙江大学とHIC-ZJUに所属する研究者らが発表した論文「InfoMasker: Preventing Eavesdropping Using Phoneme-Based Noise」は、スマートデバイスで盗聴する行為を防止するための装置を提案した研究報告である。提案装置から聞こえない超音波ノイズを送信することで録音を妨害する。
スマートフォンやスマートスピーカー、IoTなどのマイクが備わった録音可能な機器が普及しているため、隠れて録音することも手軽になってきている。一方で、自分の声がひそかに録音されるのではないかという懸念を持つユーザーもいるだろう。
最近の研究では、マイクには非線形性があり、聞き取れない超音波によって妨害できることが示されている。しかし、既存の方法の多くは人間の声を妨害するために高いエネルギーを必要とするため、ノイズは短い距離(1m未満)をカバーするだけにとどまり非実用的といえる。
この研究では、実用的で信頼性の高い妨害ノイズを実現するための盗聴防止システム「InfoMasker」を提案する。
動作は、登録やデータ増強、妨害の3つのフェーズで行う。登録フェーズでは、まずユーザーから音声素材を収集し、その中から音声の特徴を抽出する。次に、音声素材の量に応じて、音素データに分割するか、データベースから特定の話者の音声特徴と最も似ている音声を検索する。
その後、ユーザーのセキュリティ要件に応じて、データ拡張がオプションで適用され、データサンプルが拡張される。最後に、システムはデータ拡張に基づいた音素ベースのノイズを生成し、送信することで環境のマイクを妨害する。
プロトタイプは、送信機アレイ(半球状に六角形になるように超音波振動子37個を並べたもの)、2つの電力増幅器(1つはキャリア用、もう1つは変調ノイズ用)、信号発生器(ノートPC)で構成される。ノートPCを考慮しない場合、ハードウェアの実装費用は約70ドルである。半球状の送信機アレイを上から部屋全体に向けるように設置して使用する。
実験では参加者複数による録音を行い、いくつかのノイズ手法と比較し、どれくらい妨害できているかを評価した。その結果、この手法のノイズによって妨害された音声が最も低い明瞭度を示した。
さらに音声認識システムを用いた実験でも、低エネルギーでも音声認識システムの精度を50%未満に減少させることができた。低エネルギーでもある程度妨害できる結果から、妨害範囲も広がったことを示した。
Source and Image Credits: Peng Huang, Yao Wei, Peng Cheng, Zhongjie Ba, Li Lu, Feng Lin, Fan Zhang , and Kui Ren. InfoMasker: Preventing Eavesdropping Using Phoneme-Based Noise
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