岡山大で研究不正 113カ所の捏造 「HDDが壊れたからデータ破棄した」として調査協力拒否
岡山大学は同学教授が関与した論文において不正行為が見つかったとして謝罪した。教授は「地震でデータを保存していたHDDが故障した」として調査に必要なデータの提出を拒否したが、画像のプロパティなどから捏造が分かった。
岡山大学は3月24日、同大教授が関与した論文において不正行為があったと発表した。113件に及ぶ数値の改ざんや画像の捏造(ねつぞう)が認められた。教授は「地震でデータを保存していたHDDが故障した」として調査に必要なデータの提出を拒否したが、システムに残っていた画像のプロパティなどから捏造が分かった。
問題の論文は乳がんの新しい治療に関するもの。関与したのは同大学術研究院医歯薬学域教授の神谷厚範氏。論文に記載された実験動物の数と実験のために購入した動物の数が大きく乖離(かいり)していたため、実験が行われていない可能性が浮上。この他、論文中の画像についても故意による捏造が見つかった。
神谷教授は、実験動物を再利用して実験を行ったなどと説明。しかし、説明通りとしても動物の購入数が実験に最低限必要な数を下回っていた。画像についても「取り違えがあった」と主張しているが、岡山大学は「研究者としてあってはならないことであり、基本的な注意義務を著しく怠ったことによる捏造があった」と結論付けた。
調査に当たり教授に論文データの提出を求めたところ「2018年6月の大阪北部地震で実験データを保存したHDDが落下し故障したため破棄した」「紙資料も薬液に浸かって判読不能となり破棄した」として提出を拒否した。しかし、関係者へヒアリングしたところ、これを裏付ける証拠は見つからなかったという。
この論文は、専門誌「Nature Neuroscience」に19年に掲載され、引用回数は100回を超えていたという。同大は「当該分野の研究の進展に与える影響は高く、医学研究自体に対する社会の信用を損なうことにもつながりかねず、社会的影響も高いと判断した」としている。
岡山大学は再発防止策として、コンプライアンス研修会の定期開催やeラーニングシステムの活用を挙げた。神谷教授については「速やかに厳重な処分を行う」としている。
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