「どげんかせんといかん!」 WBC配信で“民放の限界”をひしひしと感じた地方民の悩み:小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)
ジャイアンツやホークス、バッファローズに加え「侍ジャパン」のキャンプ地にもなった宮崎。野球熱の高い地域ではあるが、WBCの一次リーグから米国に渡っての決勝トーナメント7試合のうち、テレビ放送されたのはたった3試合だけだった。
民放が少ない事は、情報格差といえるか
宮崎県に2つ目の民放としてUMKテレビ宮崎ができたのは1970年のことで、今から50年以上前の事である。当時日本全国でUHF局の開局ブームであり、VHFとはアンテナやチューナーが違うことから、父が屋根に登ってアンテナを設置し、受信用チューナーを別に取り付けていたのを覚えている。当時7歳の筆者は、これからテレビのチャンネルがどんどん増えるものだと思っていた。
しかしそれ以降、宮崎県には民放が増えないままだ。近隣他県に比べて、地上波無料放送で得られる情報が少ない、これは情報格差だと言っても、それを50年以上放置してきたじゃないか、といわれると返す言葉もない。他方で民放が開局できないのは経済的合理性の問題であって、県民や県政の問題とはいえないのではないか、という思いもある。
2022年4月からTVerで圏域関係なくリアルタイム視聴できるようになったことで、情報格差は埋まったように見えた。だがTVerは完全サイマル放送ではない。プレミアムコンテンツはやっぱり地上波独占という事であれば、格差は残ったままという事になる。
実は過去BSデジタル放送では、難視聴区域での受信を目的に、在京地上波キー局の放送をサイマル放送しているチャンネルがあった。受信は難視聴区域に指定された地域に限定されており、CASによって視聴がコントロールされていた。
このような衛星を使ったサイマル放送があれば、ローカル局がなくてもキー局を電波として受信できることは技術的には可能ではある。だがこれもローカル局が独立局としてオリジナル番組で勝負できるほど強ければ別だが、今なお放送網のネット料で食いつないでいる現状は変わらない。日本の放送はこの数十年間、キー局にしか作れない強いコンテンツによって、実質的に地方局のコンテンツ制作力を骨抜きにしてきたという歴史的背景がある。
テレビ放送は許認可事業であることから、既得権益で固着した古いインフラである。同時に総務省が大鉈をふるえば、動かざるを得ないところはある。そこのバランスをどう揺り動かしていくのかだとは思うが、ネット局が少なくて困っているのが福井、徳島、佐賀、宮崎という、中央に対しての政治力が弱い4県である。地上波ネットによる経済システムのルールを変えろと迫るには、なかなか難しいといわざるを得ない。何かいい知恵はないだろうか。
【記事訂正:3月28日午後5時30分】初出では地デジ難視対策衛星放送があると記載しておりましたが、この放送は2015年3月末で終了しておりました。訂正してお詫び申し上げます。
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