全社DXを実現するには「データアンバサダー」を立てるべし BIツールベンダーが提唱 どんな役割?(2/2 ページ)
クラウドBIツールの「Domo」を提供するドーモは、社内でデータ活用を浸透させるために「データアンバサダー」というポジションを立てることを推奨している。一体どのような役割を持つのか。話を聞いた。
経理部門からデータアンバサダーへ 「新しいキャリアパスに」
そんなデータアンバサダーを組織に取り入れたのがKDDIだ。ドーモでは企業のデータ活用のコンサルティングも行っており、KDDIでは経理部門からデータアンバサダーを立ててDX推進部門を設立。全社DXの推進を行っているという。
「データアンバサダーに必要なのは、自社ビジネスへの理解と各部門とコミュニケーションを取る能力。経理部門は常日頃から数字に触れているためデータに強く、社内事情にも精通し、かつ経営層にも近いポジション。データアンバサダーに適性を持つ人たちが多い」と川崎さん。
このことから、データアンバサダーは経理部門の新しいキャリアパスにもなるのではないかと川崎さんは提案している。データの専門職にはデータサイエンティストやデータアナリストがあるが、これらの職種は理系出身者が多い。一方、データアンバサダーにはビジネスへの理解が求められることから、文系出身者でもその役割を担えるのではないかと問いかける。
川崎さんは「データサイエンティストなどの専任の仕事を担う人たちに、データアンバサダーの役割を与える方法もある。しかし、これはあくまでボランティア的な仕事になりがちで評価もしづらい。であれば、分析の専門家にデータサイエンティストを定義付けしたように、データアンバサダーもポジションとして切り出すことで、データ活用の浸透は進むのではないか」と考えを述べた。
経営層こそテクノロジーを学び、先陣を切るべし
20年に始まったコロナ禍で進んだ日本のDX。多くのツールの導入がされてきたが、22年には人材育成に予算を投じる企業が増えた印象があると川崎さんは話す。23年にはDX推進に先進的に取り組む企業とそうでない企業の差は、大きく開いていくのではないかと予想している。
「DXはただデジタル技術を採用するだけでなく、組織や人、オペレーションを変化させることを指す。ここまでの日本企業はさまざまなBIツールを導入するなど“D”(デジタル化)はすごく得意、でも“X”(トランスフォーメーション)はしないことが多かった。しかし、最近はリスキリングが注目を集め、人材教育に力を入れていく流れが生まれている。ここからようやく本当の“DX”の定着が起こっていくのではないか」(川崎さん)
データ活用組織を作りたいと考える経営層の人たちには、進んでデジタル技術を学んでほしいと川崎さんは説く。経営者が自らDX推進やデータ活用のプロジェクトに参加し、テクノロジーへの理解を進める。それができない人はビジネスでの競争優位性を落としていく危険があるとしている。
「データ活用は、1つのダッシュボードを作って終わりではないし、データアンバサダーも1つのプロジェクトを完了するだけでは意味がない。ビジネスは常に動き、新しいものが次々出てくるし、マーケットも常に変わっていく。ビジネスでデータを使いたいなら、長期的に取り組める仕組みを構築していくべきではないか」(川崎さん)
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