東大など「生態系ネットワークに情報処理能力がある」ことを証明 微生物群を未来予測AIのように使う実験に成功
東京大学と京都大学、東北大学およびB.Creationは、食物連鎖のような自然に存在するネットワーク関係が情報処理能力を持っており、人間がそれを活用できるという証拠を発見したと発表した。
東京大学と京都大学、東北大学および生物系アプリの開発を手掛けるB.Creation(兵庫県芦屋市)は4月19日、食物連鎖のような自然に存在するネットワーク関係が情報処理能力を持っており、人間がそれを活用できるという証拠を発見したと発表した。
研究チームは真核微生物「テトラヒメナ」の培地を用意。微生物群に「培養液の濃度や温度を変化させる」といった操作を行い、テトラヒメナの細胞数を時系列で観測した。微生物群に与えた操作を入力、細胞数の変化データを出力と解釈し、情報処理ができるか実験した。結果、「リザバーコンピューティング」を行うのに必要な条件が備わっていることが明らかになった。
リザバーコンピューティングはニューラルネットワークの手法の一つ。学習をほとんど行わないため、計算コストがかからないという特徴がある。
実際に生態系ネットワークに情報処理能力があるかどうかを確認するため、魚の個体数変動の未来予測を行う実験も行った。魚の個体数の変化データを、一定のルールに基づいて培養液の温度変化データに変換。これを入力としてテトラヒメナの群を操作した。細胞数の変化データをルールに基づいて解釈したところ、近未来の魚の個体数を高精度に予測できた。精度は線形回帰などのシンプルなデータ解析法よりも高かったという。
研究チームは、この研究の影響について「これまでになかったデータ解析法が開発されたり、これまで理解できなかった生命現象を理解できるようになるかもしれない」としている。また、使う生態系の多様性が高いほど計算能力が高い可能性も示唆されたため、これが生物多様性の新たな価値になるとも分析している。
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