続々消える“AI絵師のマネタイズ手段” 逆に取り込むサービスも
AI生成作品の取り扱いを一時的に禁止するクリエイター支援サービスが相次いでいる。“AI絵師”のマネタイズ手段が続々消え、AI絵師向けサービスへの集中が予想される。
ゴールデンウイークが明けてから、“AI絵師”のマネタイズ手段が続々と消えている。ピクシブはファンコミュニティーサイト「pixivFANBOX」でAI生成作品の取り扱いを当面禁止すると発表。同様の対応が相次ぐ一方、AI絵師を取り込むと表明するサービスもある。
マネタイズ手段のみが規制される流れ
AI生成作品の取り扱いを一時的に禁止するサービスは、ピクシブの「pixivFANBOX」「pixivリクエスト」、虎の穴の「Fantia」、ゲオホールディングス傘下のエイシスが運営する「DLSite」「Ci-en」など。
pixivFANBOXとFantia、Ci-enはいわゆるファンコミュニティーサイトというサービスで、クリエイターが作品や制作過程について情報発信することでファンコミュニティーを作るのが主な目的だ。パトロンサービスとしての側面もあり、ファンはクリエイターを金銭的に支援できる仕組みになっている。
pixivリクエストは、ファンがクリエイターに作品制作をリクエストできるサービス。同種のサービスとしてはスケブ(東京都港区)の「Skeb」もあるが、こちらは2018年のリリース当初から「本人が直接描いていない作品」を禁止している。
DLSiteは同人誌や同人ゲームといったデータ作品の販売サイト。AIイラストを生成できる「Novel AI」などのサービスが登場して以降はAI生成作品の販売も多く見受けられる。
今回AI生成作品を禁止したこれらはいずれも、実質的な作品の販売に使えるサービスだ。DLSiteを除けば、作品を直接販売しているわけではなく、クリエイターを支援するという名目だが、いずれにしてもいわゆる“AI絵師”と呼ばれる人々の収益獲得手段として利用されている。
逆に作品投稿サービス「pixiv」はAI生成作品の全面禁止の対象になっておらず、ユーザーが作品を検索する際に、AI生成作品をフィルタリングできる状態でとどまっている。
AI専門サイトは収益化手段を提供へ
ファンコミュニティ―サービスの対応と真逆に進んでいるのが、AIイラスト専門サイトによるAI絵師獲得の流れだ。AI生成作品専門の投稿サイト「chichi-pui」はクリエイターを有償で支援できる機能を提供すると表明した。AI絵師の締め出しが進む中、chichi-puiが受け皿になる流れが予想される。
chichi-puiは2022年10月にオープンしたサイト。作品を投稿できるだけでなく、プロンプトも一緒に公開できる他、グッズ販売機能も備えている。
各社の対応は現状、経過措置の段階にある。今後は対象となる「AI生成作品」の具体的な定義に加え、イラストレーターなどの文化圏の動向を見ながら調整していく段階になるとみられる。
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