IBMも生成AI「watsonx」 透明性とカスタマイズ性で“ビジネスに使えるAI”強調
米IBMが、生成AIを含むAIとデータのプラットフォーム「watsonx」を市場に7月から順次投入する。市場のホットワードとなっている生成AIに対し、透明性やカスタマイズ性を付加価値としてビジネス向けの展開を図る。
米IBMが、生成AIを含むAIとデータのプラットフォーム「watsonx」(ワトソンエックス)を市場に投入する。AI実行環境「watsonx.ai」とデータプラットフォーム「watsonx.data」の提供を7月に始める。市場のホットワードとなっている生成AIに対し、透明性やカスタマイズ性を付加価値としてビジネス向けの展開を図る。
watsonx.aiでは従来の機械学習によるAI開発に加え、基盤モデルによるAI開発をアピール。従来は欲しいAIモデルに応じてデータを集め学習させていたが、基盤モデルではIBMが提供する基盤モデルに対し、少量のデータによる追加学習を個々のニーズに応じて行えるためAIモデルの作成や活用が高速化するという。米OpenAIの「ChatGPT」で言えば「GPT-4」が基盤モデルに当たり、これをチューニングするイメージだ。
IBM独自の基盤モデルはコード生成モデル「fm.code」、大規模言語モデル「fm.NLP」、地理空間データモデル「fm.geospatial」など10種類以上あり、それぞれ事前学習に当たっては訓練データについて法務と安全性の面から透明性を担保しているという。また、AIモデルの共有やコミュニティー機能を持つWebサイト「Hugging Face」を運営する米Hugging Face社と提携することでオープンソースの基盤モデルを使ったAI構築も可能としている。
一方で、基盤モデルの性能評価は未公開。日本アイ・ビー・エムが開いた記者説明会では「米MIT(マサチューセッツ工科大学)や他大学との共同研究では優れたベンチマーク結果を出している。そうした技術を商用のwatsonxにも今後転用していく」(同社)との言及にとどめた。
watsonx.dataでは、クエリエンジン、データ形式、ストレージ形式それぞれで主要なフォーマットに対応。特定ベンダーに依存せず、オンプレミス環境とマルチクラウド環境でワークロードを管理可能としている。さらにデータガバナンス機能も内蔵。IBMが提供する既存のガバナンスソリューションに対応する他、2023年後半に提供を始める「watsonx.governance」にも対応する。watsonx.governanceではデータセットの出自などを文書化することでAIのライフサイクル全体を統制し、説明可能なAIワークフローを実現するとしている。
関連記事
- 画像AIを調べると必ず出てくる謎のサイト「Hugging Face」ってナニモノ? 正体は急成長中の“ユニコーン”
画像生成AIについて調べていると、必ずと言っていいほど行き当たる「Hugging Face」とはなにか。実は、急成長中のAIユニコーン企業だ。どんなサービスを提供しているのか、どんな企業なのかを解説する。 - OpenAIのアルトマンCEO、「EU AI Act順守が困難ならEUでの事業は停止する」
欧州歴訪中のOpenAIのアルトマンCEOは、EUが準備中の「AI Act」と「順守できなければEUでの事業は停止する」と語った。「要件の一部には準拠するのが技術的に不可能かもしれない」という。 - AIイラスト生成技術にまた衝撃 キャラのポーズが自由自在の「ControlNet」登場
AIでのイラスト生成時、キャラクターに自由なポーズを取らせることができる──そんな新技術が話題に。Twitterユーザーの間で「革新的な変化」と話題になっている。 - Photoshop、生成AI搭載へ 塗りつぶし機能に“革命” β版を公開
米Adobeが画像生成AI「Adobe Firefly」を、画像編集ソフト「Photoshop」に搭載する。まずは「ジェネレーティブ塗りつぶし(β版)」を実装したβ版を同日より公開した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.