「頭がいつもと違う動きをした」 星空の下、“SF思考”で議論 生まれたアイデアは? NECとコニカミノルタの共創を追う:SFプロトタイピングの事例を紹介(1/4 ページ)
星空の下、SF的な思考で未来を語り合ったら「頭がいつもと違う動きをした」――プラネタリウムで実施した「SFプロトタイピング」のイベント。実施したNECとコニカミノルタに取材しました。
星空の下、SF的な思考で未来を語り合ったら「頭がいつもと違う動きをした」――プラネタリウムで実施したイベントの参加者はこう話します。SF的な思考をビジネスに活用する手法「SFプロトタイピング」を、NECとコニカミノルタが共同で実践しました。
参加者から挙がった未来のキーワード「飯ごう宇宙移民」「アンチエイジング都市」の実態や実現方法、課題を議論することで新たなアイデアを生み出します。企画の設計や進行を手掛けたSFコンサルタントの宮本道人さんは「ブッ飛んだ発想も仕事に結び付くことを信じられるようになってほしい」と話します。
どのようなワークショップだったのか、登壇者への取材を含めながらSFプロトタイピングを手掛けているSFプロトタイパーの大橋博之さんが紹介します。(ITmedia NEWS編集部)
こんにちは。SFプロトタイパー大橋博之です。この連載では、僕が取り組んでいる「SFプロトタイピング」について語っていきます。SFプロトタイピングとは、SF的な思考で未来を考え、SF作品を創作するなどして企業のビジネスに活用するメソッドです。
今回は、SFプロトタイピングをNECとコニカミノルタが実践した共創事例を紹介します。ステージはプラネタリウム。星空を見上げる幻想的な雰囲気の中で行われたワークショップと、登壇したみなさんを取材しました。
もともとNECは、J-WAVEが主催するイベント「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2022」(2022年10月21日)において、「SFが描くワクワクする未来〜SFプロトタイピングがイノベーションを生む〜」と題したセッションを実施しました(取材記事はこちら)。
そしてNEC社内でもSFプロトタイピングのワークショップを行い、その後コニカミノルタと共に今回の共創プログラム「SFプロトタイピング 共創ワークショップ 〜プラネタリウムの星空の下でワクワクする未来を創造しよう〜 in コニカミノルタプラネタリア TOKYO」(2023年2月21日/プラネタリアTOKYO)を開催しました。
ワークショップ内容のデザインとファシリテーションはSFコンサルタントの宮本道人さん(東京大学VRセンター特任研究員)が行い、ワークショップにはゲストの西田藍さん(アイドル、モデル、エッセイスト、ライター、書評家)、とNECの冨成裕輔さん(エンタープライズ企画総括部 マーケティングBPグループ プロフェッショナル)と杉山浩史さん(エンタープライズ企画総括部 シニアプロフェッショナル)、コニカミノルタの神谷泰史さん(デザインセンター デザイン戦略部 イノベーションデザインマネジメントグループ グループリーダー/envisioning studio)と大江原容子さん(デザインセンター チーフデザイナー)が登壇。両社からの参加者20人が見守る中、実施されました。
星空の下、未来に思いをはせる SFプロトタイピングはどんなもの?
今回のワークショップについて興味深かったのは、サブタイトルに「プラネタリウムの星空の下でワクワクする未来を創造しよう」とある通り、東京都・有楽町にあるプラネタリアTOKYOにおいて、満天の星々の下で「未来を創造する冒険」をコンセプトとした演出が施されたことです。
演出の意図は「こどものころ、夏の夜。友達とどこか知らない場所へ出掛けるようなワクワク感。初めてのキャンプ。虫や鳥の声がこれほど大きく聴こえることへの感動。たき火の明かりが、さまざまな想いを巡らせる。そして、空には一面の星空。そんな気分にさせ、ワクワクする世界観を共有できる」というもの。
そのため登壇者のドレスコードを「キャンプ/アウトドアウェアを着用」と定めた他、ステージにはキャンプ用品やランタンの他、望遠鏡など星を連想する小道具も設置され、ムードを盛り上げていました。
ワークショップではSFプロトタイピングの手法の一つである、「趣味の言葉」と「未来の言葉」を参加者から集め、そこから「未来の新しい言葉」を生みだすことで新しい思考を促す方法が取られました。約2時間のうち、最初に壇上の6人がお手本としてSFプロトタイピングを実施し、次いで参加者も交えて2回目を行いました。
未来の新しい言葉として「飯ごう宇宙移民」「アンチエイジング都市」が生まれました。その言葉から、それはどのようなものか? どう使うのか? 問題点は何か? などのストーリーを議論。未来の新しい言葉を起点に、課題や可能性、実現方法を考えることで思考を未来に飛ばすことが目的です。これらのプロセスを踏むことでSFプロトタイピングがビジネスに変革を起こして行く可能性が提示されました。
ワークショップは予定通り約2時間で終了。参加者からは「もっと時間をかけて欲しかった」「とてもワクワクし、頭がいつもと違う動きをしていた」などと好評でした。(詳しいワークショップの内容はこちら)
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