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どこもかしこも“Vlog強化” ここまで「Vlogカメラ」が増えた理由小寺信良のIT大作戦(2/3 ページ)

Vlogカメラの先駆者は、ソニーだと言っていいだろう。2020年6月に、「VLOGCAM」と銘打ったカメラ「 ZV-1」を発売した。今回、デジタルカメラ市場でトップシェアのキヤノンがいよいよVlogへ向けて動き出したことで、改めてカメラ市場の一角にVlogというエリアがあるということが、広く認識されることになった。

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「Vlog」とは何を指すのか

 Vlogとは、もともとの意味合いは「ビデオブログ」なので、動画で日常生活を公開したり、思うことを語ったりといった、どちらかというとドキュメンタリーやジャーナリズム文脈であったように思う。だが今は、Vlogの定義が拡大してきており、テレビや映画といった旧来の動画コンテンツではない、ネットの動画領域全体を指すような使い方になってきている。

 SNSでの主力カメラは、圧倒的にスマートフォンだ。スマホカメラは年々機能向上を続けているが、それはフロントカメラの話。自撮りする側のインカメラに、革命はなかなか起こらない。SNSは、テキスト、写真、動画へと拡張してきているわけだが、いわゆる「インフルエンサー」といわれる人たちももはやバエ写真では稼げず、動画コンテンツへと進出している。写真系だったインフルエンサーの、「動画プロ化」が起こった。

 収益があるなら、無理して自前のスマホで撮る必要はなく、動画に強いデジタルカメラを使うようになった。スタッフやチームを編成して、撮影規模を拡大している。筆者が海外イベントで見た中では、女性2人のチームで出演者とカメラマンを交代で担当し、バリエーションを稼ぐという例があった。こうした少数精鋭なら「どちらも稼げる」わけで、収益率は高い。

 これまでスマホで自撮り動画を撮ってきたアマチュアも、インフルエンサーの「脱スマホ化」を見て、動画カメラに興味を持ち始めている。すでに家の中にカメラが山ほどある人からすれば信じられないかもしれないが、常に新規参入者はいる。そうした人達が、初めてスマホ以外に買うカメラとして、Vlogカメラが選ばれている。写真はスマホの方がきれい、と思っているので、スマホより動画が良く撮れることが選択基準だ。

 ソニーの調査では、初代「ZV-1」が初めてのカメラ(専用機)だったというユーザーは約54%、ZV-E10では約44%であったという。一眼市場において「初めてカメラを買った」ユーザー比率は平均34%程度なので、明らかに高い。

 Vlogカメラの特徴は、動画がきれいに撮影できるというところだけではない。Vlog最大の特徴は、コンテンツがトーク主体であるという事から、音声がきれいに録れるのかという点にも、力点がある。

 ソニーのZVシリーズは、伝統的にマイク上部にモフモフのウィンドスクリーンが装着でき、ティーザー広告でもシルエットにモフモフがあればZVの新作だなという事が分かる。ZV-E1以降はマイクカプセルの設計を見直し、全方位を撮るのではなく顔認識に応じて指向性が変えられるようになった。


ソニーVLOGCAMシリーズのトレードマークにもなった“モフモフ”

 パナソニック「LUMIX G100」はノキアの「OZO Audio」という技術を搭載し、2020年時点からすでに顔認識で指向性が変えられた。それだけ市場分析がよくできていたという事が伺える。

 Vlog市場拡大を受けて、ワイヤレスマイクも活気づいている。RODE、DJI、Hollylandといった新進気鋭メーカーが2〜3万円程度で次々とワイヤレスマイクを投入している。2023年はあのAnkerもワイヤレスマイク市場に参戦してきた。しゃべりを録るという需要が、ワールドワイドで本格化しているのが分かる。


Ankerが出したワイヤレスマイク

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