文化庁の「AIと著作権」の解釈が話題に AIに詳しい弁護士「かなり踏み込んだ内容」(2/2 ページ)
内閣府が公開している資料「AIと著作権の関係等について」がTwitter上で話題になっている。文化庁が制作した資料で、AIと著作権に対する現行法での見解などをまとめている。
AIに詳しい弁護士も言及 「かなり踏み込んだ内容」
この資料について、AI領域の法務に詳しい柿沼太一弁護士(@tka0120)も自身のTwitterアカウント上で「かなり踏み込んだ内容」と言及。下記のような見解(原文ママ)を述べている。
話題の、文化庁作成の資料「AIと著作権の関係等について」ですが、開発と利用を分けるなど、わかりやすいなと感じていたのですが、よく読んでみると、かなり踏み込んだ内容が記載されていると思い、気になり始めました。
非享受利用について「※1 例えば、3DCG映像作成のため風景写真から必要な情報を抽出する場合であって、元の風景写真の「表現上の本質的な特徴」を感じ取れるような映像の作成を目的として行う場合は、元の風景写真を享受することも目的に含まれていると考えられることから、このような情報抽出のために著作物を利用する行為は、本条の対象とならないと考えられる」と記載されている部分です。
あえて、でしょうが「元の風景写真の「表現上の本質的な特徴」を感じ取れるような3DCG映像作成を目的として、風景写真から必要な情報を抽出する」行為という、刺激的ではない事例を例としてあげています。
しかし、これは「ある特定のキャラクターの「表現上の本質的な特徴」を感じ取れるようなキャラクター映像の作成を目的として当該キャラクターのイラストから必要な情報を抽出する」行為にも当然当てはまります。
AIの文脈に即して少し抽象化すると「学習対象著作物の「表現上の本質的な特徴」を感じ取れるような著作物の作成を目的として、学習対象著作物から必要な情報を抽出する」行為と言い換えることができます。
要は「学習行為」であっても、当該学習行為の結果生成されたAIモデルからの出力が著作権侵害に該当する可能性(あくまで「可能性」です。学習段階ではまだそのような著作権侵害の出力がされると決まっているわけではないので)がある場合には、享受利用に該当するという解釈なのでしょうね。
このような行為は、これまで但書の「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当するのではないかとする説もありましたが、この資料は「享受利用」に該当するという説のようで、私はこのような見解を初めて見ました。
この考え方は、「AI開発・学習段階」と「生成・利用段階」を分けて考えるべき、としつつ、結局「生成・利用段階」での著作権侵害の可能性を理由に、前段階である学習行為を制限しようとする考え方なので、条文解釈として個人的には疑問があります。
「学習行為」というある著作物の利用行為の「享受」「非享受」の判断において、まだ現実に生じていない著作権侵害の可能性を考慮することができるのか、ということです。
「どのような場合にAI学習を制限すべきか」という重要論点は、これからさらに議論が進んでいくと思うので、また考えてみたいと思います。
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