請求QUICKは、なぜID従量課金を廃止するのか? 「SaaSではなく金融で儲ける」
SBIビジネス・ソリューションズは、請求書管理SaaS「請求QUICK」のID数従量課金を7月から撤廃すると発表した。これにより、中小企業はほぼ無料で、インボイス制度に対応した請求書管理サービスを利用できるようになる。
SBIビジネス・ソリューションズは6月7日、請求書管理SaaS「請求QUICK」のID数従量課金を7月から撤廃すると発表した。これにより、中小企業はほぼ無料で、インボイス制度に対応した請求書管理サービスを利用できるようになる。
中小企業は業務効率アップのためにはSaaSにコストをかけない
SaaSの多くは一般に“フリーミアム”モデルを取っており、お試しに相当する期間や規模、機能であれば無料で使えるが、実務でしっかり使おうと思ったら課金が発生するのが普通だ。どの点で課金するかというと、ID課金が多い。導入先企業の成長に従ってID数も増えるからだ。
ところが請求QUICKでは、これまで6ID以降、月額500円だったID従量料金を撤廃する。それはなぜか。
「中小企業が中心の請求QUICKのユーザーにとって、ID数制限がDX化の足かせになっていた。IDを黙って使いまわしていたり、1人の経理だけにIDを発行したりと、余計な手間が発生していた」と夏川雅貴社長は話す。
ここには中小企業特有の事情がある。大企業が、SaaSなどにコストをかけても業務の生産性をアップさせようという意識がある一方、業務効率化にコストをかける中小企業は少ない。インボイス制度にしても、デジタル化のいいチャンスだと捉える大企業が多い中、中小企業は「法令対応で余計なコストがかかる」と捉えるところが多い。
そうした背景のもと、中小企業の業務をデジタル化するにはSaaS自体をほぼ無料で提供するしかないというのが、同社の考えだ。
SaaSではなく金融で稼ぐビジネスモデル
もちろん、社会貢献のためにそうしているわけではない。中小企業の社内業務がデジタル化されれば、社外とのデータ連携がやりやすくなる。請求書業務のデジタル化とは、お金のやりとりがデジタル化されるということで、各種金融サービスにつなげることが可能になる。
「中小企業の業務のデジタル化とFinTechサービスの提供をひとつながりで考えている」と、SBIビジネス・ソリューションズの親会社SBI FinTech Solutionsの金子 雄一社長は話す。
SBI FinTech Solutionsは、決済代行サービスやファクタリングサービスなど金融サービスを営んでいる。請求QUICKは、発行した請求書データをすぐに現金化できるファクタリングサービス「入金QUICK」や、取引先がクレジットカードで支払いできる請求書を発行できる「クレカQUICK」、請求書の入出金を自動消込できる「消込QUICK」といった金融サービスを提供している。SaaS自体はほぼ無料で提供し、こうした周辺の金融サービスで収益を得るのが、請求QUICKのビジネスモデルだ。
昨今、SaaS自体は無料で提供し、付随する金融サービスで収益をあげるビジネスモデルのサービスが増えつつある。特に、体力のない中小企業やスタートアップは、SaaS利用料の負担を重く感じる一方、資金調達など金融サービスへのニーズが大きい。今後、SaaSの進化を見る上で、金融サービスとの連携は重要なピースになっていきそうだ。
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