女性声優の“存在しない”水着画像をAIで作成、販売……法的に問題ないの? 弁護士に聞いた(2/2 ページ)
実在する人物に似た画像をAIで生成し、それを販売する事例が現れた。顔は女性声優や女優などを模しているようで、水着などを着せている。著名人を模したAI画像やそれを作成できるAIモデルの売買について、法的に問題はないのだろうか。弁護士に聞いた。
画像の販売についてはパブリシティ権侵害となるが……
画像の販売については、明らかに先ほどの類型(1)に該当するので、パブリシティ権侵害に該当するという。一方、AIモデルの販売については「そのようなモデルの販売行為自体がパブリシティ権侵害に該当するかはフェーズを分けて考える必要がある」と柿沼弁護士。
AIモデルの問題を考える上では「AIモデルを作る」と「AIモデルを販売する(公開・提供する)」の2つのフェーズに分けて検討する必要があるという。その上で柿沼弁護士は「AIモデルを作るフェーズはパブリシティ権の侵害には当たらない可能性が高い」と考えを示す。
これは、AIモデルを作るために画像データを収集し、学習に使うだけでは、上記3類型の行為のいずれにも該当せず「専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる行為」には該当しない可能性が高いためとしている。
では「AIモデルを売る」についてはどのように考えるべきか。柿沼弁護士は「AIモデルには学習に利用した画像がそのまま入っているわけではない。つまり『AIモデルを売る』という行為は直接画像を売る行為とは区別する必要がある。“パブリシティ権を侵害する可能性のあるツール(AIモデル)を売ることが違法か”を考えなくてはならない」と指摘。
例えば、AIモデルを販売しても、購入者がパブリシティ権を侵害するような行為をしなかった場合(例:生成画像を手元に置いて楽しむだけのような場合)ならば「購入者はパブリシティ権侵害に問われず、販売主もパブリシティ権侵害にはならないのではないか」と説明する。
一方、購入者が生成画像を販売するなどパブリシティ権を侵害する行為をした場合は、販売主もそのような行為をほう助したと見なされる可能性が高いという。
「構造としては“Winny事件”に近い」
柿沼弁護士は「構造としては“Winny事件”に近いと思う。ファイル共有ソフト『Winny』を悪用して著作権侵害をしたユーザーだけでなく、当該ソフトの提供者にも著作権侵害についての責任があるのかという問題と似ている」と話す。
「ただし」と柿沼弁護士は続けて「ここまで話したのは、AIモデルの販売行為そのものの問題。通常はAIモデルを販売する場合、そのAIモデルで生成できる女優の氏名や写真を付けて販売している。そのような女優の氏名や写真の利用は当然パブリシティ権侵害や不正競争防止法違反になる」とも指摘。
「女優の氏名や写真を付けずにAIモデルを販売することはおよそ考えられないので、結局のところ適法な販売行為はできないということになりそう。また、生成される画像の中身によっては名誉毀損に該当する可能性もある。いずれにしても、もし私が弁護士として事業者からアドバイスを求められたら、倫理的な問題があり、違法行為につながる行為として、AIモデルの販売は止めるよう強く伝えると思う」(柿沼弁護士)
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