「AIが出てきた今とリンクする」 昭和20年代の“計算手”を描いたマンガ「続く道 花の跡」が話題に
「少年ジャンプ+」で6月16日に掲載された、ななせ悠氏作の読み切り漫画「続く道 花の跡」がTwitterなどで話題となっている。
「少年ジャンプ+」で6月16日に掲載された読み切り漫画「続く道 花の跡」(作者:ななせ悠)が話題だ。コンピュータが生まれる前の日本を舞台に、今はもう消えてしまった計算を生業とする「計算手」を扱った作品で、Twitterでは読者から「AIが世に出た昨今とリンクする」「IT業界にいる人にぜひ読んでほしい」などの声が数多く投稿されている。
同作は、戦後間もない1949年、神奈川県小田原市にある、とあるカメラレンズを設計する事業所が舞台。レンズ設計者から来る膨大な計算をさばく「計算手」に就いた女性が、計算手として働きつつ、上司の課長に製作の手伝いを頼まれた「フリップちゃん」という計算機をめぐってストーリーが展開する。
AIが登場した今に似ている(少しネタバレあり)
作品内では明言されていないが、フリップちゃんのモデルとなったのは日本初のコンピュータ「FUJIC」でほぼ間違いないだろう。富士フイルムが1956年に稼働を開始したもので、レンズ設計に必要な計算を自動化するためのものとして、同社の技術者で当時レンズ設計課長を務めていた岡崎文次氏を中心にごく少人数のメンバーが開発したとされている。なお、作中に登場する岡城課長はおそらく岡崎氏をモデルにしていると思われる。
フリップちゃんは、計算の自動化、高速化を実現するものだが、同時に計算手の仕事がなくなることも意味する。それを不安視する他の計算手と、課長の想いとの間で主人公は翻弄される。この「不安」は、いわゆる「AIが仕事を奪う」と叫ばれる昨今の状況と通ずる部分があるといえよう。
一方で、作中で岡城課長は「ぼくはね、これからいくらでも新しい仕事が生まれると思っている」と語るシーンが出てくる。コンピュータという新しい技術と、それによって消えた計算手という仕事、そしてそれが歴史となった今を振り返り、最先端のテクノロジーであるAIをどう見るか、新しい視点を授けてくれる作品となるかもしれない。
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