広がるエンベデッドファイナンス インフォマート「BtoBプラットフォーム」にMFケッサイの請求代行機能を組み込み
保険や資金調達など金融系のサービスを、部品として他のSaaSなどに組み込む「エンベデッドファイナンス(組込型金融)」が徐々に広がりを見せている。インフォマートは、主力サービス「BtoBプラットフォーム」に、マネーフォワードケッサイが提供する請求代行サービス「MoneyFoward Kessai」を組み込み、「掛売決済」として7月26日から提供する。
保険や資金調達など金融系のサービスを、部品として他のSaaSなどに組み込む「エンベデッドファイナンス(組込型金融)」が徐々に広がりを見せている。
インフォマートは、企業間の受発注や請求業務をデジタル化する同社の主力サービス「BtoBプラットフォーム」に、マネーフォワード子会社のマネーフォワードケッサイ(MFケッサイ)が提供する請求代行サービス「Money Forward Kessai」を組み込み、「掛売決済」として7月26日から提供する。
インフォマート コーポレート・デベロップメント部門 執行役員の児玉勉氏は「デジタル化がゴールではなく、デジタル化のあと何ができるかに企業は期待している。決済、ファイナンスが近い領域だ」と狙いを話す。
請求代行機能をSaaSに組み込み
BtoBプラットフォームは請求書の発行機能を備えているが、そこに付随する取引先の与信審査、代金回収、入金確認、督促業務などの機能は備えていない。企業側が掛取引を行うにあたり、信用度の高い大口取引先については自社で与信審査などを行っているが、小口の新規取引などは、請求代行サービスなどを使い未回収リスクをカバーする場合があった。
請求代行サービスを使うと、代金回収や与信などの作業が不要になるほか、未回収リスクをなくすことができる。一方で、請求書は請求代行サービスから発行することになり、請求書発行がBtoBプラットフォームと請求代行サービスに分かれてしまう。販売管理システムからの連携も複雑になる。
今回の掛売決済は、BtoBプラットフォーム内にMoney Forward Kessaiを組み込むことで、ワンストップサービスを実現したことがポイントだ。BtoBプラットフォーム内から画面を切り替えるだけで請求代行サービスを利用でき、いずれの場合も請求書はBtoBプラットフォームから送信できる。
MFケッサイは親会社サービスに先んじて機能提供
インフォマートがMFケッサイをパートナーに選んだ理由は、APIラインアップの豊富さのほかに、契約形態の柔軟性があった。実は今回の連携では、一般的な債権譲渡を行わず、売掛保証により求償権をMFケッサイが取得する形を取る。
「債権譲渡だと、請求代行サービスからの請求書が相手に送られ、売り手自身で請求書を出せなくなる。取引先の信用度が高まった時点で、自社与信の掛売りに移行したい場合でも、余計な負荷や連絡を減らしたい」と児玉氏は債権譲渡を使いたくなかった理由を話す。
債権譲渡だと、取引先に債権譲渡通知も必要だ。「あなたの債権が譲渡されました」と連絡がいくわけで、取引先から問い合わせが入ったり、信用されていないのか? と連絡が入る場合もある。これを避けた。
実はMFケッサイにとって、金融機能を他のSaaSに提供するのは今回が初めてだ。親会社のマネーフォワードは、ある意味BtoBプラットフォームと競合するサービスも提供しているが、価値提供のスピードを優先し、親会社に先んじて提供を決めた。
BtoBプラットフォームを通じて、これまでMoney Forward Kessaiに関心を持たなかった大口債権保有企業のほか、新規顧客へリーチできることが狙いだ。
インフォマートは、BtoBプラットフォームにさまざまなファイナンスや決済サービスを組み込んでいく方針だ。売掛請求書を早期に現金化するファクタリングサービスをGMOペイメントゲートウェイと連携して提供しており、今回のMFケッサイは2社目。今後も提携を通じて拡大する方針だ。現在約30兆円ある年間流通総額のうち、5年をかけて1〜2%の取扱高を目指す。
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