殺虫成分いらずで蚊を駆除 花王の新技術、市販の可能性は?
花王は20日、蚊に界面活性剤を含む水をミスト状にして吹き付けることで行動を制限し、最終的に駆除する技術を発表した。物理的な駆除技術のため蚊は抵抗性を獲得しにくい可能性がある。
花王は6月20日、蚊に界面活性剤を含む水をミスト状にして吹き付けることで行動を制限し、最終的に駆除する技術を発表した。殺虫剤に頼らない“物理的”な駆除方法だという。
蚊の体表面は水をはじく成分で覆われていて雨が降っても濡れずに飛べる。蚊の行動を妨げる方法を研究していた花王は、石けんなどに含まれる界面活性剤に着目。水と油が混じり合って汚れが落とせるように、蚊の体表面を濡らせると考えた。
多くの界面活性剤を比較検討した結果、表面張力が低い液体を使うと蚊の羽を濡らして効果的に広がることが分かった。「ミスト状に噴霧して吹きかけるだけで簡単に蚊を落下させる」。
さらに、より表面張力が低い液体を使うと、蚊はひっくり返ったまま動かないノックダウン状態に。これは蚊が酸素を取り込む「気門」を塞ぐためと考えられ、界面活性剤の調整次第でそのまま窒息死させることもできた。
蚊は、デング熱やマラリアなどの感染症を媒介するため世界各地で深刻な被害をもたらしている。被害地域では主にピレスロイド類と呼ばれる殺虫剤を使用しているが、近年は抵抗性を持つ蚊も増えているという。
花王は界面活性剤を用いた物理的な駆除技術なら蚊は抵抗性を獲得しにくいと予測、持続的に使える殺虫手段になると期待している。また他の害虫などへ応用できる可能もあるという。
一方で殺虫成分を含まないこと安全性の高い殺虫剤になる可能性もある。花王に市販の可能性について聞いたところ、「(一般的に)殺虫剤として市販するにはニーズの把握から規制や表示等の課題など、クリアしなければならないことが多くある。今回の研究成果についても現時点で具体的な市販の計画はないものの、検討はしていきたい」(広報)と話していた。
研究成果は、Nature Researchの電子ジャーナルScientific Reportsに掲載され、6月15日と16日にバンコクで開催された学会「6th Asia Dengue Summit 2023」で発表した。
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