Facebookのアルゴリズムは二極化に影響はあるが時系列表示にしても問題は解決しないとの研究結果
2016年の米大統領選で問題とされたFacebookなどのソーシャルプラットフォームの「エコーチェンバー」問題は、アルゴリズムを排除しても解決できないという複数の論文が公開された。これらの論文はMetaの協力により、多数のユーザーデータの分析に基づいたものだ。
2016年の米大統領選挙以来、米MetaのFacebookとInstagramで採用されている強力なアルゴリズムが、誤った情報と政治的二極化を増幅させているとして、非難されている。だが、7月27日(米国時間)にNatureとScienseに発表された一連の研究論文は、こうした課題はプラットフォームのアルゴリズムのせいだけではないことを示唆している。
これらの論文は、テキサス大学、ニューヨーク大学、プリンストン大学などの研究者らがMetaの協力を得て、2020年の米大統領選挙に関連する数百万人のFacebookとInstagramのユーザーデータを分析し、参加に同意した一部のユーザーを対象とする調査も行って書き上げたものだ。関連論文がこの後さらに12件公開される見込みだ。
論文の1つは、フィードのアルゴリズムが有権者の態度や行動にどのような影響を与えるかについての研究をまとめている。このアルゴリズムは、ユーザーが過去にクリックしたグループや友人などに基づいて表示するコンテンツを最適化するものだ。これによりユーザーのプラットフォーム滞在時間は長くなるが、自分の関心のあるものしか表示しない、いわゆる「エコーチェンバー」となっていると批判されている。
だが、研究者らが2020年の選挙期間中に一部のユーザーのアルゴリズムを変更したところ、ほとんど変化がみられなかったという。具体的には、対象となるユーザーのフィードを時系列表示に変えたが、二極化に及ぼす測定可能な影響はなかったとしている。時系列表示にすると、信頼できないソースからのニュースの表示は大幅に減ったが、ユーザーの政治的態度に大きな変化はなかったという。
同様に、Facebookユーザーが同じイデオロギー的整合性を持つアカウントから取得するコンテンツを減らしても、二極化や誤った情報や過激派の見解に対する感受性には大きな影響はなかった。
アルゴリズムを無効にすると、ユーザーがFacebookやInstagramに費やす時間が大幅に減り、一方でTikTok、YouTube、その他のサイトの利用時間が増加した。
研究ではまた、保守的なFacebookユーザーが、ファクトチェッカーによって誤った情報と分類されたコンテンツを消費する可能性が高くなることも明らかになった。分析の結果、Facebookの政治投稿に含まれるWebサイトは、リベラル派よりも保守派の方がはるかに多いことも判明した。
全体として、ファクトチェッカーによって誤った情報を拡散したと特定されたFacebook上の政治ニュースソースの97%が、リベラル派よりも保守派に人気があった。
「これらの発見は、現代アメリカの民主主義の問題をソーシャルメディアのエコーチェンバーのせいにする一般的な説に疑問を呈するものだ」と論文の著者らは述べている。
研究者らは、Facebookのアルゴリズムが二極化にはほとんど影響を及ぼさないという結果にはなったが、この研究は2020年の選挙期間中の数カ月間のみを対象としているため、アルゴリズムがユーザーに与える長期的な影響を評価することはできていないと指摘している。
Metaの国際問題担当社長、ニック・クレッグ氏は公式ブログで、この調査結果は「Metaのプラットフォームの主要な機能だけが有害な感情の二極化を引き起こしたり、主要な政治的態度、信念、行動に意味のある影響を与えたりするという証拠はほとんどない」ことを示していると主張した。「調査結果がこれらの問題に対する社会の理解を促進することを期待する」(クレッグ氏)
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