ガバメントクラウドの選定要件、見直しへ “国産クラウド”に追い風
デジタル庁が、政府の共通クラウド基盤「ガバメントクラウド」の選定基準を見直す方針だ。8月下旬に実施予定の公募では、他社製のものなど複数サービスを組み合わせることで要件を満たす形態を認め、これまで参入できなかった国産クラウドサービスも参入しやすくするという。
デジタル庁は、政府の共通クラウド基盤「ガバメントクラウド」の選定基準を見直す方針だ。これまでの技術要件は要求事項が多岐にわたり、1社で基準を満たせるのは米大手ベンダーのみという状態だった。しかし8月下旬に実施予定の公募では、他社製のものなど複数サービスを組み合わせることで要件を満たす形態を認め、これまで参入できなかった国産クラウドサービスも参入しやすくするという。同庁が8月15日に明らかにした。
ガバメントクラウドは、政府やデジタル庁が主導するデジタル改革の一つ。自治体や政府が使うシステムの基盤を共通化する取り組みで、データの移行性向上や、サーバ導入コストの削減などを見込む。政府は基幹業務システムを利用する全ての地方公共団体に対し、原則2025年までにガバメントクラウド上へ移行するよう促している。
現時点でガバメントクラウドに採択されているのはAWSやMicrosoft Azureなど4サービスで、いずれも外資系。基準の厳しさから国産サービスは応募ができない状況で、例えばさくらインターネットの田中邦裕社長はデジタル庁による初回の公募があった2021年当時、ITmedia NEWSの取材に対し、ガバメントクラウドに求められる要件はセキュリティなどさまざまな面で海外ベンダーのような規模がないと達成は難しいと答えていた。
一方、SNSなどでは「海外サービスに日本のデータを渡すのか」「日本のサービスを育てないのか」とする声も出ていた。デジタル庁が5月から6月にかけて実施した技術要件に関する市場調査でも、17の事業者から「複数の事業者で連携提供する形を認めてほしい」「サードパーティー製品を組み合わせることで機能を補完し、要件を充足する形を認めてほしい」などの意見が集まっており、今回の対応の参考になったとみられる。
ただし、選定基準の見直し後も既存の4サービスはガバメントクラウドとして残るという。提供事業者の決定は10月下旬の見込み。
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