生成AIに“性格診断テスト”実施 GPTやLlamaに個性はある? 中国ByteDanceの研究者らが検証:Innovative Tech
中国のByteDanceに所属する研究者らがは、大規模言語モデル(LLM)に個性があるかを検証した研究報告を発表した。
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このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
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中国のByteDanceに所属する研究者らが発表した論文「Do LLMs Possess a Personality? Making the MBTI Test an Amazing Evaluation for Large Language Models」は、大規模言語モデル(LLM)に個性があるかを検証した研究報告である。
LLMの倫理的な懸念や幻覚の問題を解決するために、強化学習などの高度な技術が採用され、人間の価値観へ近づきつつある。このような状況において、人間に近い能力を持つLLMは、人間のような人格を持っているのか。
この疑問を解決するために、この研究では、最も広く普及している人間の性格評価ツールの1つである「MBTI」(Myers-Briggs Type Indicator)テストを用いて、LLMの性格を探る。
具体的には、広範な実験を実施して(1)異なるLLMの性格タイプ、(2)プロンプト・エンジニアリングによる性格タイプ変更の可能性、(3)訓練データセットがモデルの性格にどのような影響を与えるか、を探る。
MBTIは93の多肢選択問題。例えば、「A.あなたはよく考えずに行動したり、早口で話したりしますか?」「B.あなたはよく理性に従って行動し、論理的に考え、感情に邪魔されずに決断を下しますか?」などの問題が出題される。
分析結果は次に示す通りである。LLMは、MBTIプロファイルに反映されるように、異なる性格タイプを示した。例えば、ChatGPTのMBTIタイプはENTJであり、自己主張と意見表明の傾向が特徴で、自信にあふれ決断力があり生来の指導力を備えている。
GPT-4はINTJに分類され、批判的思考、要約、計画を得意とし、自分の目標を達成することに長けた専門家タイプである。Llama7bはINFJに分類され、人に対する洞察力が強く、自分の価値観に忠実なタイプである。
また、適切なチューニングをしているLLMであれば、ユーザーのプロンプト(明示的、暗黙的の両方)で偏った性格に変えられることも分かった。さらに、LLMの性格の違いは、学習時にモデルに与えるコーパスの違いに起因している可能性も示した。
Source and Image Credits: Pan, Keyu, and Yawen Zeng. “Do LLMs Possess a Personality? Making the MBTI Test an Amazing Evaluation for Large Language Models.” arXiv preprint arXiv:2307.16180(2023).
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