「四季報AI」β版で分かった、AIだからできること、そして想定外のニーズ(2/3 ページ)
東洋経済新報社の「四季報AI」は、ChatGPTを活用し、会社四季報オンラインの記事やデータを主な参考元として、株式投資に役立つヒントを対話形式で引き出せるサービス。現在β版ですが、面白い使われ方をしているそうです。
初心者っぽい質問もAI相手なら恥ずかしくない
──β版は、実はすでに私も使わせてもらっているのですが、その反響などはどうですか?
坂野氏:β版、つまりはまだ技術検証のフェーズなわけですが、いろいろと厳しいご意見も含めて、数多くのフィードバックをいただいています。その対応、改良をやっています。ただ、これは発見だったのですが、投資の専門用語などへの質問がかなりあって、これは投資の初心者の皆さんが何かを調べる入口になっているということが分かってきました。
──それ分かります。これは四季報AIに限ったことではないんですけど、相手がAIだと、普段だとこんなこと聞いたら恥ずかしいかな? みたいな照れくささがなくなるんですよね
坂野氏:これはわれわれとしては、割と想定外の部分でした。想定していたのは、それなりに四季報オンラインなどを普段から読んでいて、投資に下地のあるユーザーが調べものをしたり、会社を比較したり、レポートをまとめるといったことに使っていくというものでした。もちろん、そういうユーザーさんもいるのですが、投資を始めたばかりの皆さんがいろんな角度で投資について教えてほしいという使い方をしているのは、これは想像以上の感じです。
──そもそも調べ方を知っている人は生成AIに頼らなくてもいい部分もあるんでしょうね
坂野氏:まさにそこなんですよ。調べるために必要な用語がそもそも分からない。投資について考えるためには、時事的なことも調べないといけないし、業種というようなテーマ設定も必要だったりするのですが、まずはそこら辺の勘所が分からないんですよね。だから意外といろんな質問がされるし、フィードバックもいただける。こういった想定外の動きが見えたことは、β版としてリリースしてよかった部分です。
──β版は今どれぐらいのユーザー数となっているのですか?
坂野氏:大々的なPRはしていませんが、多くの反響をいただいている中、少しずつ増やしていっているところです。すでに2000人ぐらいは招待しています。今月いっぱいで招待コードの新規発行は停止する予定です(編集部注:25日に申し込み受付を終了済み)。β版の期間がいつまでになるかは、まだ確定はしてません。今は、それよりも、できるだけたくさん使ってもらうことの方が大事だと考えています。とにかく使っていただいて、いろんなご意見をいただくことが重要で、そういったご意見の中から、改善点をクリアして、ユーザーさんにメリットをお届けできるように成長していきたいです。
BtoBの利用や就活生にも
──現在、まさに正式版に向けて調整が続いていると思うのですが、今後四季報AIが目指していくところなども、ぜひ教えてください
坂野氏:われわれの強みは会社四季報をはじめとするデータを持ってるところです。だから、今はChatGPTを使っていますが、他にいいLLMが出てくれば、データとユーザーのみなさんの間をつなぐというところで生成AIを使ってわけですから、他のLLMに乗り換えてもいいのです。そして、われわれが保持しているデータは今後も蓄積されていきます。そこに生成AIが加わることで、投資家だけではなく、企業調査とか分析目的の利用もイメージできるようになってきました。これは、四季報オンラインは投資家のためのものというところから、これまでは想定していなかったニーズが見えてきています。
──四季報AIがユーザーのすそ野を広げてくれることになるということですか?
坂野氏:われわれは、証券会社などにデータそのものを提供してもいるので、APIでの提供も考えられます。つまりBtoBの利用ですね。また、四季報AIには、会社四季報だけではなく、就職四季報、業界地図、内部的にはそういうデータも入っています。だから、例えば、就職活動をしている学生さんもユーザーに成り得るんですね。その場合、学生さん向けの料金を含めた提供の仕方も検討の必要があると考えています。
──生成AIに頼るというよりは、自社データのために生成AIを使い倒してやろうという感じですね
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