「みんなにめちゃめちゃ嫌がられた」 “データドリブン行政”に向け庁内のあらゆるデータを棚卸 三重県のDX担当者に聞く苦悩と希望(2/4 ページ)
業務のデジタル化やデータ活用を進める「行政DX推進プロジェクト」を進める三重県。実現に向けては庁内データの棚卸など「みんなにめちゃめちゃ嫌がられた」こともあったという。詳細を担当者に聞く。
「めちゃめちゃ嫌がられた」 庁内のあらゆるデータを棚卸
2年にわたる調整の果てに立ち上がった三重県の行政DX推進プロジェクト。しかし、実行フェーズにも大きな壁が立ちはだかっていた。最も大きかったのは、データ活用に欠かせないデータがシステムや部署間で散在しており、集約できない「サイロ化」状態に陥っていたことだ。
従来、庁内の情報システムは部署ごとに個別最適で整備しており、データも各システムに散在していた。「これらを1カ所に統合するというのは現実的ではないが、必要な時に必要なデータを柔軟に収集し、現状を分析・可視化するだけでなく、最終的には意思決定に活用できる仕組みと体制を作りたかった」と岡本さんは話す。
データが散在しているということは、どこにどのようなデータがどれだけ存在するのか、把握しづらいということでもある。「例えば隣の課であっても、どんなデータをどれくらい持っているのか分からない」(岡本さん)という状況では、データ活用のスタート地点にも立てない。そこでまずは庁内のデータ保有状況を把握することから始めた。
庁内には約330の部署があるが、22年7月から8月にかけて全部署に自部署が持つデータの調査を依頼した。デジタルデータだけでなく、アナログ形式で保有しているものも含めてあらゆるデータを対象に棚卸を試みるというものだったため「めちゃくちゃ嫌がられた」と岡本さんは苦笑いする。それでも約半数の177部署から回答が寄せられたという。
この棚卸調査で把握できた総データ数は2291件、うち個人情報などを含む公開できないデータは1078件で、公開可能なデータはオープンデータ化を進めている。回答があった部署数の割合から、単純計算すると庁内には5000件ほどのデータがあると推測しており、今後も庁内データの棚卸調査を地道に継続する方針だ。
Google Cloudでデータ活用基盤整備
調査と並行し、データ活用の要となる基盤の整備も進めた。内閣府が公開している資料「スマートシティリファレンスアーキテクチャ ホワイトペーパー」に準拠した仕様を前提に入札を行い、Google Cloudを採用。クラウドデータウェアハウス「BigQuery」、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールの「Looker Studio」などの利用を決めた。
これにより、県が保有・管理するデータだけでなく、センサーやAIカメラなどのIoT機器、公開API、Google広告のデータなど、多様なデータソースから必要なデータを取り込むことが可能に。一連のデータを分析・可視化し、課題解決や新たなサービスの創出につなげられる環境を整備したという。
しかし、データ基盤を整備して終わりでは意味がない。実際にデータで県内の課題を解決していかなければならない。デジタル推進局は「各部署でデータを利活用することで解決できそうな課題を抱えていないか」「庁内外のデータを活用して課題の解決につなげるアイデアがないか」という調査も庁内で実施した。
回答は16件と多くなかったが「本気でデータ活用型の行政に取り組みたいと考えている部署が16あった」(岡本さん)と捉え、16部署全てに詳細をヒアリング。その結果に基づき、23年に2つの実証実験プロジェクトを立ち上げたという。
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