「みんなにめちゃめちゃ嫌がられた」 “データドリブン行政”に向け庁内のあらゆるデータを棚卸 三重県のDX担当者に聞く苦悩と希望(4/4 ページ)
業務のデジタル化やデータ活用を進める「行政DX推進プロジェクト」を進める三重県。実現に向けては庁内データの棚卸など「みんなにめちゃめちゃ嫌がられた」こともあったという。詳細を担当者に聞く。
「データ活用の重要性」を啓発 デジタル推進局の役割は
Google Cloudを活用したデータ活用の取り組みを進める三重県。しかし、取り組み自体はようやく立ち上がったばかりで「庁内でデータ活用の重要性を理解している職員は、1割にも満たないのが実情」(岡本さん)という。一方、だからこそデジタル推進局の果たすべき役割は大きいとも感じていると話す。
「情報技師として採用されている職員は十数人で、人的リソースが潤沢なわけではない。しかし各部署と主体的にコミュニケーションを取りながら、彼らの課題を汲み上げてデータの利活用によるソリューションを一緒に考えていくという取り組みを継続していく。例え失敗しても、そこから学ぶことができる『上手な失敗』なら許容する雰囲気を作って、若手職員がチャレンジできる環境を整備するのも管理職としては重要なテーマ。データを使うことで新しい行政の姿に変わっていけると多くの職員に腹落ちしてもらえるようにしたい」(岡本さん)
ITベンダーといかに効果的な協力体制を構築できるかも、庁内のリソース不足の補完という観点では大きなポイントだ。今回の実証実験では、データ活用基盤の構築を手掛けた日鉄ソリューションズが各部署へのヒアリングなどにも同席し、データ活用施策全般を支援した。岡本さんは「行政側と課題意識を共有して一緒のチームとして動いてくれるITベンダーを選ぶことが大事だ」と指摘する。
庁内のデータを業務に利活用するだけでなく、将来的には県内の市町や同様の取り組みを進める全国の地方自治体、民間企業との連携も視野に入れる。岡本さんは「こうした構想も、政府のホワイトペーパーに準拠しているからこそ比較的容易に実現できるはず。デジタルの力により巨大なデータの活用が可能になっている。行政でもそのメリットを享受できる環境を整備したい」と話す。
三重県は今後、25年度までに毎年度2〜3テーマの実証事業を立ち上げる予定。三重県が行政DXの本丸と位置付けるデータ活用の意義と価値を庁内に浸透させるべく、デジタル推進局としてイニシアチブを発揮したいという。
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