炭化したパピルス巻物内の単語をAIモデルで解読 「ベスビオ火山チャレンジ」で初の賞金
ポンペイの火山噴火で炭化したパピルスの巻物を解読するコンテストで、単語が初めて解読された。パピルスの3D画像や断片画像と、それらでトレーニングした機械学習モデルをオープンソース化したこのコンテストは3月にスタートしたものだ。
西暦79年の火山噴火で埋もれたポンペイ近郊邸宅で発掘された、炭化したパピルスの巻物「ヘルクラネウム・パピルス」に記された単語が初めて解読された。巻物の解読コンテスト「ベスビオ火山チャレンジ」の主催者は10月12日、初の単語解読者、ルーク・ファリター氏(21)に4万ドルの賞金を授与すると発表した。
このコンテストは、ケンタッキー大学のブレント・シールズ教授らが2019年に開始した巻物解読研究に端を発するもの。巻物は炭化しており、開こうとすると崩れてしまうため、1700年代に発掘されて以来、ほとんどが開かれずに保管されている。
教授らはまず、粒子加速器で炭化した巻物を3D CTスキャンし、並行して崩れてしまった巻物の断片をスキャンして、それらでデータセットを構築した。チームはこのデータセットでトレーニングした機械学習モデルを使って文字の断片の検出に成功し、解読を加速するため、研究で構築した機械学習モデルと画像をオープンソース化した。
それに着目したエンジェル投資家で元GitHubのCEO、ナット・フリードマン氏と投資家のダニエル・グロス氏の支援で今年3月、巻物解読の貢献者に賞金を授与するベスビオ火山チャレンジが立ち上げられた。年内に巻物内の連続した文章を少なくとも4つ解読すれば、70万ドル獲得できる。
単語を解読したファリター氏は、他の参加者、ケイシー・ハンドマー氏(1万ドルの賞金を獲得)が公開したCTスキャン上に見えるインクのような形状の画像で機械学習モデルをトレーニングして改善し、この画像発見とモデル改善のサイクルを繰り返す中で「πορφυραc」という単語を発見した。
この報告を受けたシールズ教授のチームはこれが「紫」という意味の単語であることを認定した。教授は発表文で巻物の内容全体は解読可能だと確信したと語った。「このような才能あるチームが協力し、解読することは新たな領域への第一歩だ」。
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