コインで表か裏が出る確率は“50%ではない?” 49人の研究者が35万回投げて検証 肝は投げる親指の動き:Innovative Tech
オランダのアムステルダム大学をはじめとする研究者たちは、コイン投げにおける表と裏が出る確率が50%ではないという仮説を検証した研究報告を発表した。
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このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
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オランダのアムステルダム大学をはじめとする研究者たちが発表した論文「Fair coins tend to land on the same side they started: Evidence from 350,757 flips」は、コイン投げにおける表と裏が出る確率が50%ではないという仮説を検証した研究報告である。
多くの統計の教科書では、コインを投げた際に表と裏が出る確率はそれぞれ50%であると述べている。しかし、これが現実の世界でも当てはまるのかという疑問が提起されている。
2007年に、ある研究者たちが新しい理論を提案した。これによれば、コインを投げる際の親指の動きがコインに微妙な揺れを与え、その影響でコインが空中で一方の面が上を向く時間が長くなるというものであった。そして、この面が出る確率は約51%になると予測された。
この研究では、49人からなる研究チームを結成。先述の理論を厳格に検証する実験を実施した。具体的には、46種類の異なる通貨と額面を持つコインを合計で35万757回投げ、投げた前後の状態を記録した。
その結果、先の研究と同じ傾向を確認できた。コインは投げられたときの面が上になる確率が50.8%であった。しかしながら、注目すべきことに、投げる人によってその確率には大きな違いが見られた。
例えば、ある人はコインが60.1%の確率で開始時の面で着地するのに対し、別の人はその確率が48.7%であった。このことから、研究者は、人それぞれがコインを投げる際に異なる角度や力で投げることが、コインの挙動に影響を与え、同じ面が上になる確率を変動させる要因であると考察している。
Source and Image Credits: Bartos, Frantisek, et al. “Fair coins tend to land on the same side they started: Evidence from 350,757 Flips.” arXiv preprint arXiv:2310.04153(2023).
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